企業の利益を最大化するために、多くの経営者や部門責任者がコスト削減に取り組んでいます。特に経理部門は、会社のお金の流れを管理する重要な部署であり、その業務効率化はコスト削減に直結します。
しかし、「どこに無駄があるのか分からない」「何から手をつければ良いのか…」といった悩みを抱えている方も少なくありません。また、コスト削減が従業員の負担増や業務品質の低下に繋がることを懸念する声も聞かれます。
本記事では、経理部門で実践できる具体的なコスト削減のアイデアを10個厳選してご紹介します。成功に導くための手順や、陥りがちな失敗例もあわせて解説しますので、自社の状況と照らし合わせながら、最適なコスト削減策を見つけるヒントとしてご活用ください。
なぜ今、経理のコスト削減が重要なのか?

経理部門のコスト削減は、単なる経費節減以上の意味を持ちます。企業の成長と安定に不可欠な3つの重要な役割を担っているからです。
利益創出への直接的な貢献
企業の利益は「売上 – コスト」というシンプルな計算式で成り立っています。売上を伸ばすことと同様に、コストを削減することも利益を創出するための重要な手段です。
特に経理部門のコスト削減は、企業の固定費を直接的に圧縮できるため、利益率の改善に大きく貢献します。削減できたコストは、新たな事業への投資や人材育成、従業員への還元など、企業の成長を加速させるための原資として活用できます。
経営の健全化と意思決定の迅速化
コスト削減に取り組む過程では、業務プロセスや費用の内訳を詳細に見直すことになります。これにより、これまで見過ごされてきた非効率な業務や不要な支出が可視化され、経営の健全化が進みます。
また、クラウド会計システムなどを導入して業務を効率化すれば、月次決算の早期化が実現します。経営陣は常に最新の経営数値をリアルタイムで把握できるため、市場の変化に対応した迅速かつ的確な意思決定が可能になります。
変化に対応できる強い組織体制の構築
コスト削減を通じて業務プロセスが標準化・効率化されると、特定の担当者にしかできない「属人化」した業務が解消されます。これにより、担当者の急な退職や異動といった不測の事態にも対応できる、柔軟で強い組織体制が構築されます。
さらに、定型的な作業から解放された経理担当者は、財務分析や経営戦略の立案支援といった、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。これは、従業員のスキルアップとモチベーション向上にも繋がります。
【勘定科目別】経理でコスト削減が見込める5つの領域

経理部門のコストは、様々な勘定科目に分散しています。どこに削減の余地があるのか、代表的な5つの領域を見ていきましょう。
人件費・採用費
人件費はコストの中でも大きな割合を占めます。残業代の削減はもちろん、業務効率化によって最小限の人員で業務を遂行できる体制を築くことができれば、大幅なコスト削減に繋がります。
消耗品費・通信費などの諸経費
オフィスで日常的に使用するコピー用紙や文房具などの消耗品費、電話やインターネットなどの通信費、書類の郵送費なども、積み重なると大きな金額になります。ペーパーレス化や契約プランの見直しによって削減が可能です。
業務プロセスにおける「時間」というコスト
目には見えませんが、「時間」も重要なコストです。例えば、請求書の手入力や押印のための出社、書類探しなどに費やされる時間は、本来であればもっと生産的な業務に使えるはずです。これらの時間を削減することは、実質的な人件費の削減と同じ効果があります。
支払い手数料
銀行への振込手数料や、クレジットカードの決済手数料なども削減の対象です。例えば、取引先への支払いを月末にまとめる『総合振込』を活用するだけでも振込回数が減り、手数料を削減できます。手数料が安いネットバンキングへの切り替えも有効です。
税金(タックスコスト)
法人税や消費税などの税金は、適切な会計処理や税制優遇制度の活用によって、合法的にコントロールすることが可能です。節税対策を講じることで、キャッシュフローを改善できます。
【実践編】経理のコスト削減アイデア10選

ここでは、明日からでも始められる具体的なコスト削減のアイデアを10個ご紹介します。
1. ペーパーレス化の推進
請求書や領収書、各種申請書などを電子化することで、紙代、印刷代、インク代、郵送費、保管スペースといった物理的なコストを大幅に削減できます。
2. 経費精算システムの導入
従業員の経費精算をシステム化することで、申請・承認プロセスが迅速化されます。経理担当者の手作業によるチェックや入力作業が不要になり、人的ミスを防ぎながら業務時間を大幅に短縮できます。
3. 会計システムのクラウド化
クラウド会計システムを導入すれば、銀行口座やクレジットカードの取引データを自動で取り込み、仕訳を自動化できます。これにより、入力作業の手間が省け、リアルタイムで経営状況を把握できます。
4. 請求書発行システムの活用
請求書の作成から送付、入金管理までを自動化できるシステムです。請求書の印刷や封入、郵送といった手間がなくなり、発行漏れや入金消込のミスを防ぐことができます。
5. 振込手数料の見直し
現在利用している銀行の振込手数料を確認し、より手数料の安いネットバンキングや手数料優遇サービスのある銀行への切り替えを検討しましょう。総合振込を活用して、振込回数をまとめることも有効です。
6. アウトソーシング(外部委託)の検討
記帳代行や給与計算など、専門性が高い一方で定型的な業務を外部の専門業者に委託する方法です。専門知識を持つ人材を自社で雇用するよりもコストを抑えられる場合があります。
7. RPAによる定型業務の自動化
RPA(Robotic Process Automation)は、パソコンで行う定型的な作業をソフトウェアロボットに代行させる技術です。データ入力や転記、レポート作成などを自動化し、人件費を削減します。
8. 電子契約サービスの導入
契約書を電子化することで、印紙代や郵送費が不要になります。また、契約締結までのリードタイムが短縮され、書類の保管・管理も容易になります。
9. 備品・消耗品の一括購入や見直し
オフィスで使う備品や消耗品は、購入先を一つに絞って一括購入することで、単価を下げられる可能性があります。また、本当に必要なものか定期的に見直すことも大切です。
10. 専門家による税務コンサルティング
顧問税理士などの専門家に相談し、最新の税制に基づいた節税対策や資金繰りのアドバイスを受けることも、有効なコスト削減策です。
経理のコスト削減を成功させるための4ステップ

思いつきでコスト削減を進めると、現場の混乱を招いたり、効果が長続きしなかったりします。計画的に進めるための4つのステップをご紹介します。
ステップ1:現状の業務とコストの可視化
まずは、経理部門のどのような業務に、どれくらいの時間と費用がかかっているのかを正確に把握します。業務フローを書き出し、各プロセスにかかる時間や人件費、経費を数値化しましょう。
ステップ2:削減目標と優先順位の設定
可視化されたデータをもとに、「何を」「いつまでに」「どれくらい」削減するのか、具体的な目標を設定します。その際、コスト削減の効果が大きく、かつ実行しやすい施策から優先順位をつけて取り組むことが成功の鍵です。
ステップ3:具体的な施策の実行と効果測定
設定した目標と優先順位に基づき、コスト削減策を実行します。実行後は必ず効果測定を行い、「目標を達成できたか」「新たな問題は発生していないか」などを定期的にチェックします。
ステップ4:定期的な見直しと改善
一度施策を実行して終わりにするのではなく、効果測定の結果をもとに、さらなる改善点を探し続けます。市場環境や社内状況の変化に合わせて、常に見直しを行うことで、継続的なコスト削減が可能になります。
よくある失敗例から学ぶ!コスト削減を進める上での注意点

コスト削減は、やり方を間違えると逆効果になることもあります。ここでは、よくある失敗例とその対策を3つご紹介します。
必要な投資まで削ってしまう
目先のコストを削減することだけを考えると、将来の成長に必要な投資まで削ってしまう危険性があります。例えば、業務効率を大幅に改善するITツールの導入費用を惜しんだ結果、長期的には人件費の増大を招くケースです。削減すべきコストと、未来への「投資」となるコストを見極める視点が重要です。
従業員の理解を得られず、モチベーションが下がってしまう
経営層だけでコスト削減を決定し、現場の従業員に一方的に実行を求めると、反発を招きやすくなります。なぜコスト削減が必要なのか、その目的とメリットを丁寧に説明し、現場の意見も取り入れながら進めることが大切です。従業員の協力なくして、コスト削減の成功はあり得ません。
業務品質やセキュリティレベルが低下する
コスト削減を意識するあまり、業務プロセスを無理に簡略化したり、安価でセキュリティの脆弱なツールを導入したりすると、業務品質の低下や情報漏洩のリスクを高めることになります。削減後の業務フローが適切か、セキュリティ対策は万全か、といった点も十分に検討する必要があります。
経理のコスト削減に関するQ&A
Q1. コスト削減は、まず何から手をつけるべきですか?
A1.まずは「現状の可視化」から始めることをお勧めします。特に、ペーパーレス化に繋がる「紙」関連のコストや、毎月定額で発生している「振込手数料」の見直しは、効果が見えやすく、比較的着手しやすい領域です。現状を把握した上で、費用対効果が高いものから優先的に取り組むとよいでしょう。
Q2. ITツールを導入したいですが、費用対効果はどのように判断すればよいですか?
A2. ツールの導入費用(初期費用・月額費用)に対して、どれだけのコスト削減効果が見込めるかを試算します。例えば、ツール導入によって削減できる作業時間(例: 月20時間)に、担当者の時給単価を掛けて人件費削減額を算出します。この削減額が導入費用を上回るかどうか、また何ヶ月で投資を回収できるか(ROI)を一つの判断基準にするとよいかと思います。
Q3. 中小企業でも取り組めるコスト削減策はありますか?
A3. はい、もちろんです。本記事で紹介したアイデアの多くは、企業の規模に関わらず取り組むことが可能です。特に、月額数千円から利用できるクラウド会計ソフトや経費精算システムの導入は、少ない投資で大きな業務効率化が見込めるため、中小企業にこそおすすめです。また、アウトソーシングを部分的に活用することも有効な手段と考えられます。
まとめ:戦略的なコスト削減で強い経営基盤を

経理のコスト削減は、単に支出を切り詰める活動ではありません。業務プロセス全体を見直し、非効率な部分を改善することで、企業の生産性を高め、より強い経営基盤を築くための戦略的な取り組みです。
今回ご紹介したアイデアやステップを参考に、自社の課題解決に繋がるコスト削減策を検討してみてはいかがでしょうか。
ITツールの導入や業務のアウトソーシングは、コスト削減を加速させる有効な手段です。どのサービスが自社に合っているか分からない、まずは情報収集から始めたいという方は、お気軽に資料請求やお問い合わせをご活用ください。
経理BPOならBPIOにお任せください

経理・労務・総務等のバックオフィス業務の代行だけでなく、業務設計やDX支援など幅広く業務を支援します。
業務を効率化し、コア業務に集中できる環境をご提供し、関わる全ての会社に最適なバックオフィス環境を実現するBPOサービスです。
ご興味がありましたら、ぜひ一度下記のボタンよりサービス概要のご確認や、お気軽にお問い合わせくださいませ。
カテゴリー
RANKING
お役立ち情報
CASE