免税事業者とは?課税事業者との違いと納税の仕組みについて解説

2024.04.24

免税事業者とは?課税事業者との違いと納税の仕組みについて解説

消費税の免税事業者と課税事業者の違いをご存知でしょうか。この2つの違いは、納税義務があるかどうかです。もし誤ると、将来的に消費税の申告について影響がでることも。そのため、経理担当者は、自社が免税事業者であるか課税事業者であるかを正確に理解し、適切な会計処理を行う必要があります。

そこで本記事では消費税の免税事業者と課税事業者の違いについて解説します。経理担当者が注意すべきポイントや、納税の仕組みについても解説しますので、参考にしてください。

免税事業者とは?

免税事業者とは、消費税の申告と納税義務がない事業者です。法人企業であれば、決算申告のときに法人税のみを申告し、個人事業主は、確定申告時に所得税のみを申告します。

原則、免税事業者とは、基準期間(前々年度にあたる2年前)の課税売上高が1,000万円以下の事業者です。また、課税売上高は、消費税が発生している売上で、土地の譲渡や株の売買は対象になりません。そのほか、医療や教育など公益サービスの提供は、消費税の申告と納税が免除される場合があります。

免税事業者の場合、インボイス制度における「適格請求書発行事業者」には該当せず、課税事業者との取引では経営戦略に影響を与える可能性もあります。


免税事業者と課税事業者との違いは消費税の納税義務

消費税法では、免税事業者のほかに課税事業者が存在します。この2つの違いは、その税金の納税義務があるか否かです。

課税事業者は、商品代金のほかに消費税分を上乗せして販売します。インボイス制度開始後の免税事業者は、その分を商品代金に上乗せし販売できますが、仕入税額控除の適用ができません。

また、消費税を申告する際に「仕入税額控除」を適用できます。仕入税額控除とは、売上で預かった消費税から支払った消費税を控除する方法です。免税事業者は、仕入や経費の支払いで消費税を支払っても、売上で預かっている金額がないため、控除できない点には注意が必要です。

免税事業者が課税事業者を選択した場合の注意点

免税事業者が課税を選択した場合、注意しておきたいポイントに「免税事業者に戻れるタイミング」があります。そのタイミングが訪れるのは、2年間の縛りが無くなったときです。


課税事業者を選択している場合は2年間の縛りがある

課税売上高の基準でみれば免税事業者の場合であっても、消費税課税事業者選択届出書を提出していることで、その申告と納税が必要です。

この届出書は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から効力が発生します。この届出書を提出している場合は、効力発生の事業年度から2年間は免税事業者にはなれません。また、2年間経過していても実際に戻るためには、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに、消費税課税事業者選択不適用届を提出する必要があります。

インボイス制度に対応した場合は扱いが異なる

免税事業者がインボイス制度に対応するため課税を選択した場合、適格請求書発行事業者として登録した時期で、免税に戻る手続き方法が異なります。免税事業者に戻れるタイミングと税務署へ提出する必要書類は以下の表の通りです。
インボイスを登録した時期
(課税事業者選択届出書の提出の有無)
最短で免税事業者に戻れる時期必要書類
令和5年10月1日までに登録
(提出なし)
いつでも戻れる(2年縛りのルールなし)適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書
令和5年10月1日以降に登録
(提出あり)
・翌課税期間の初日から起算して15日前までに必要書類を提出する必要がある。
・課税事業者選択届出書を提出しているため2年間の縛りが優先される。
・適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書
・消費税課税事業者選択不適用届

免税事業者の経理担当者が注意しなければならないこと

免税事業者は、将来的に課税売上高が1,000万円を超えたとき課税事業者になります。また、免税であっても課税を選択する可能性もあります。そのため経理担当者は、消費税込みと抜きの金額を正確に把握できるような、会計帳簿をつけなければなりません。
特に、インボイス制度の適用により会計年度の途中で免税から課税に変わった場合には、その税金の申告時に2割特例の適用を受けるか否かの判断をする必要があります。

会計帳簿は「税込経理」で作成

免税事業者の会計帳簿は、原則「税込経理」で作成します。税込経理とは、100円の備品を購入した場合は110円、飲料水を購入した場合は108円という税金を含んだ金額です。そのため、これらを正確に把握するために税込経理で計算します。

インボイス制度のために課税事業者になった場合の2割特例

免税事業者がインボイス制度に対応するために課税を選択した場合、特例で軽減措置が適用できます。これが「2割特例」という経過措置です。消費税は基準期間における課税売上高が1,000万円超ない場合、免税事業者となりこの申告は不要です。しかし、1,000万円を超える課税売上がないにもかかわらずそれを選択した場合、現行では令和8年9月30日までの日の属する事業年度において、課税売上にかかる消費税(いわゆる仮受消費税)の2割のみの納税が認められています。
例えば、課税売上高が800万円の場合、2割特例を適用した計算式は以下の通りです。
800万円 × 10/110 × 2割 = 145,400 (100円未満の端数は切捨て) 
また、課税売上高が800万円で製造業を行っている簡易課税適用事業者の場合は以下の通りです。
800万円 × 100/110 = 7,272,000円(1,000円未満の端数は切捨て)
7,272,000円 × 70% = 5,090,400円
5,090,400円 × 7.8/110 = 359,900円(100円未満の端数は切捨て)
簡易課税で求めた消費税額と2割特例の消費税額を比較した場合、以下の計算式から2割特例を選択する方が有利であることがわかります。
359,900円 – 145,400円 = 214,500円
2割特例を選択した方が有利かどうかを、経理担当者が判断することは難しいため、専門家にアドバイスを受ける方がよいでしょう。

また、簡易課税を選択していない場合は、仕入や経費の支払いで発生する仮払消費税と、売上から発生する仮受消費税を差引する「本則課税」と比較し有利な方を適用できます。課税売上高をもとに、みなし仕入率を用いて消費税額を計算する簡易課税制度を適用している場合も有利な方を適用できます。ただし、簡易課税制度の適用には、届出が必要なため注意が必要です。なお、2割特例の適用に際し、特別な届出は不要です。

まとめ

本記事では、免税事業者と課税事業者を区別する「消費税の納税義務」の違いや、納税の仕組みについて解説しました。インボイス制度が開始され、今まで免税事業者だった場合でも制度に対応するために、課税事業者になってる事例も多くあり、もとの事業者に戻れるタイミングについても紹介しました。

消費税の申告時に2割特例の経過措置が適用できるため、有利な方を選択し申告を行いましょう。必要な手続き方法を含め分からない場合は、無理に判断せず専門家に相談することをおすすめします。

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