経理アウトソーシングとは?外注できる業務から委託先の選び方まで解説

2024.05.31

経理アウトソーシングとは?外注できる業務から委託先の選び方まで解説

 すべての企業で必要な業務である「経理」。しかし、スタートアップや中小企業などが、企業成長や繁忙期にあわせて、経理担当者を採用することは困難です。

 そんななか、注目されているのが「経理 アウトソーシング」。アウトソーシングは「業務を専門性の高い外部の業者に委託すること」を指す言葉で、いま多くの企業で総務、経理、採用といった部門における業務などをすべてまたは一部、外部に委託する形態が取られています。

 この記事では、経理業務を外注・アウトソーシングサービスを利用するメリット・デメリットやアウトソーシングできる業務の種類、委託する際の外注先の選び方などを解説します。

経理アウトソーシングとは

 経理アウトソーシングとは、自社の経理業務を総合的に、または一部を専門性の高い外部企業に委託することや、委託先のサービスを指します。電子化など経理に関する法改正といった動きが活発になるなかで注目度が高まり、現在多くの企業がアウトソーシングサービスを利用しています。

 また、経理アウトソーシングサービスは、「経理BPO」や「経理代行サービス」と言われることもあります。

 経理アウトソーシングできる主な業務
アウトソーシングできる主な業務について、簡単にご紹介します。委託先やサービスによって、依頼できる業務は異なるため、依頼時には確認が必要です。
・売上計上/請求書発行/売掛金管理(消込)
・費用計上/銀行振込/未払金,買掛金管理(消込)
・経費精算/小口現金精算
・固定資産/減価償却管理
・伝票の起票/整理
・月次試算表/決算対応(決算書の作成など)
・資金繰り/キャッシュフロー管理
・予算管理
・納税/税務申告
・給与計算/支給/社会保険の納付/年末調整

経理アウトソーシングの費用相場

 上記のように経理業務は多岐にわたるため、アウトソーシングする業務内容によって費用は大きく異なります。売上高や従業員数によって料金が変動する場合もあり、スタートアップや中小企業が依頼する場合には、月10〜100万円ほどの料金になるケースが多いでしょう。

 アウトソーシング先としては「税理士事務所」や「経理アウトソーシング会社」などが一般的。委託先別に費用の例を見てみましょう。

・税理士事務所
対象企業:個人事業主、小規模企業、中小企業、ベンチャー企業
業務内容:経理専門業務・記帳など単純業務の丸投げ
費用目安:5〜30万円程度

・経理アウトソーシング会社
対象企業:中小企業、ベンチャー企業、中堅企業、大企業
業務内容:経理専門業務、経理業務すべてor単純業務
費用目安:10〜300万円程度

 個人事業主や小規模企業、スタートアップ、中小企業の場合、記帳や給与計算といった細かな業務のみを依頼するケースもあります。

・記帳業務
費用は仕訳数/伝票の枚数によって変動するのが一般的。一定の仕分数で月料金が設定され、超過した場合は料金が加算されます。アウトソーシング先によって異なりますが、200仕訳であれば10,000〜20,000円程度が目安になります。

・給与計算業務
従業員数によって、料金が変動します。従業員1人あたり1,000〜1,500円が相場といえるでしょう。

経理アウトソーシングのメリット

 経理アウトソーシングを利用する主なメリットは、以下の5つ。この項目では、それぞれ詳しく解説します。

1.人材不足の解消
2.リソースの柔軟な確保
3.経理業務の属人化防止
4.法改正などへの対応
5.ミスや不正の防止

1. 人材不足の解消

 社会的に人材不足が問題視される現在、経理担当者の採用も困難な状況です。多くの経理部門の責任者が採用に課題を感じています。

 企業や事業が拡大したことで業務量が増加したり、退職や人事異動があり人が不足したりした場合に、すぐに採用することは難しいのが現状です。

 そうした背景から、経理を含め、アウトソーシングが注目されるようになりました。経理アウトソーシングを利用すれば、その時々の状況にあわせて、専門性の高いプロに業務を委託できるため、人材不足の解消につながります。足りないリソースの分だけ委託することが可能なため、柔軟にすばやく対応できます。

2. リソースの柔軟な確保

 経理業務には、閑散期と繁忙期があります。また、企業の規模やフェーズによっても段階的に経理業務の量や内容は変わっていきます。

 このような特徴から、経理部門では人員配置が課題となるケースが多くみられます。人が急に不足することや、繁忙期にあわせて従業員を多く雇用しすぎて閑散期にリソースが余ってしまう場合などがあるのです。

 経理アウトソーシングを利用することで、時期や企業のフェーズにあわせて、経理人材をスポット的に確保することが可能になります。そのため、リソースが不足したり、余ることなく、適切な状態を保ちやすくなります。

3. 経理業務の属人化防止

 会社の利益に直結しないため、最低限の人員で構成されることの多い経理部門。特定の業務についての知識やノウハウが属人化しやすい傾向にあります。そのため、休職や退職によって、問題が生じやすいのです。

 経理アウトソーシングを導入すれば、業務の整理・引き継ぎが発生し、属人化の解消のきっかけとなります。また、経理アウトソーシング会社全体でサポートしてくれるため、休職・退職によって業務が滞る心配もありません。

4. 法改正などへの対応

 税金制度や社会保険制度の改正があるごとに業務フローやシステムの変更が求められる経理業務。法制度の変更のたびに情報を集め、業務フローを改善し続けるのは企業や従業員にとって負担になるでしょう。

 経理アウトソーシングは専門性の高さを特徴としているため、制度の変更や法改正にも即座に対応してくれます。ヒアリングの機会などを設ければ、最新の制度にあわせたノウハウが自社に蓄積するのも経理アウトソーシングを利用するメリットといえるでしょう。

5. ミスや不正の防止

 正確性が求められる経理業務。しかし、細かな数値の管理が多い分、業務上のミスや横領といった不正が発生しやすい業務でもあります。

 経理アウトソーシングを導入することで、アウトソーシング先が第三者として自社の経理業務に関わることになります。チェック体制の強化につながるため、ミスや不正の防止につながり、業務の適正化につながるといえます。

経理アウトソーシングのデメリット

 次に、経理アウトソーシングを利用するデメリットについても覚えておきましょう。メリットとデメリットを比較して、経理アウトソーシングが自社に適しているかチェックすることが重要です。

1.ノウハウが蓄積しにくい
2.情報の外部流出のリスクがある
3.柔軟に対応してもらえない場合も

1. ノウハウが蓄積しにくい

 経理業務をアウトソーシング先にすべて委託・丸投げするような依頼をした場合、社内に経理業務のノウハウが蓄積しにくい状況になります。

 将来的に経理業務を内部化したい場合は、アウトソーシング先との打ち合わせや報告を受ける機会を増やす、アウトソーシング先とマニュアルを共有するといった対策を行うようにするのがオススメです。

2. 情報の外部流出のリスクがある

 アウトソーシングするためには、当然ですが社内の情報を外部に共有する必要があります。そこで不安視されるのが、セキュリティリスクです。多くの企業の場合、セキュリティ体制は盤石に設計されていますが、不安を感じる場合は事前の打ち合わせなどで管理体制などを確認しておきましょう。

 また、万が一のトラブルに備え、個人情報、特定個人情報、秘密保持の契約を締結することも重要です。

3. 柔軟に対応してもらえない場合も

 社内の経理部門と比較した場合、アウトソーシング先には柔軟な依頼がしにくいこともあります。また、突発的な依頼や、事前の契約にない依頼が難しいなどアウトソーシングするからこそのデメリットも。契約前などタイミングをみて、そのような事態が発生したときの対応を、アウトソーシング先に相談しておくのがオススメです。

経理アウトソーシング先の選び方

 経理アウトソーシングを依頼できる企業は多く、どこに外注したらいいか決めかねている方も多いでしょう。選ぶ時に確認すべき事項は以下になります。

 1.対応業務の範囲
 2.経験や資格
 3. 情報/セキュリティ管理
 4. 対応スピード/柔軟性

1.対応業務の範囲

 非常に広範囲に及ぶ経理業務。アウトソーシング事業者やサービスによって、委託できる業務は異なるため、事前に委託したい業務が対応範囲内か確認しておきましょう。

 アウトソーシング事業者は、経理業務をすべて委託できる事業者から、一部の業務を低コストで担当してくれる事業者までさまざまです。経理担当者のリソースや自社の今後の採用予定などとあわせて、適切な事業者・サービスを選ぶことが大切です。

2.経験や資格

 アウトソーシング先を選ぶ際に、見るべきポイントのひとつは「どのようなスタッフがいるか」。実務経験豊富なスタッフが対応してくれるのか、税理士や公認会計士は充分な数所属しているのかなどを事前に確認しておきましょう。

 たとえば、税務書類の作成や税務申告の代行などは税理士が行う必要があります。そのため、委託したい業務が対応可能かどうかの確認とあわせて、対応するスタッフの経験や資格などを聞いておきましょう。

 また、スタッフの経験や資格以外にも、専任で対応してくれるかどうかなどサポート体制も重要です。専任のスタッフがいる場合、柔軟かつ迅速に対応してくれる可能性が高くなります。

3. 情報/セキュリティ管理

 アウトソーシングする際には、情報漏えいのリスクがあります。情報管理/セキュリティ体制などは事前に確認し、セキュリティ意識の高い企業・サービスを選びましょう。また、事前に個人情報、特定個人情報、秘密保持の契約は必ず締結することも忘れずに。事業者が情報管理に関するポリシーなどを公開している場合は、それも確認しておきましょう。

4. 対応スピード/柔軟性

 経理アウトソーシング事業者を選ぶ際は、どれだけ迅速かつ柔軟に対応してくれるかも確認しておきましょう。突発的な依頼にはどれくらいの日数で対応してくれるか、コミュニケーションはスムーズかなどは、事前に相談・判断していくことをオススメします。

 知名度のある大きな事業者やサービスを検討している場合は、口コミやレビューなどを確認するのも大切です。

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