仕入税額控除とは?|概要、対象、注意点などを解説

2024.04.16

仕入税額控除とは?|概要、対象、注意点などを解説

 仕入税額控除は、消費税の計算で、売上げに含まれる消費税から、仕入れに関連する消費税を引く仕組みのことです。事業者にとって非常に複雑かつ重要な税務上の手続きとなります。

 本記事では仕入税額控除に関する概要や対象、そして事業者が留意すべき重要なポイントなどについて、詳細かつ理解しやすい形で解説していきます。

 仕入税額控除の対象には一定の条件があり、通常は課税対象である商品やサービスの仕入れに係る消費税を引くことが可能です。ただし一部、非課税となる対象などがあるため、それぞれのケースにより、異なる規制や要件が適用されることがあります。

 また、事業者が留意すべきポイントとして、正確な仕入税額控除を行うために、仕入れに関する詳細かつ正確な記録が必要であることが挙げられます。

 次章から仕入税額控除について原則的・基本的な対応を解説しますが、個々の企業の事情によって適切な対応は異なることが想定されます。例外規定が存在するケースもありますので、実際の対応については顧問税理士などの専門家にご相談ください。

仕入税額控除とは

 仕入税額控除は課税売上高の消費税から、課税仕入れの消費税を差し引くことです。消費税の支払い額は、期間中の課税売上高にかかる消費税から、同じ期間中の課税仕入れに関する消費税を引いて算出されます。

 課税仕入れとは、事業者が他の者から資産を譲り受けること、または、役務を他の者から提供されることを指します。ただし、非課税や免税となる取引、給与の支払いなどはこの対象外となります。

 通常、商品やサービスの代金には、一般的には10%(一部、例外的に8%)の消費税が含まれており、この税金は購入時に消費者が負担します。消費者が支払った消費税は事業者によって受け取られ、その後、事業者はこの税金を国に納税します。

 しかしながら、この消費税の徴収プロセスには売上げ時の消費税の受け取りだけではなく、仕入れ時の支払いも含まれます。事業者は商品やサービスを仕入れる際にも消費税を支払っており、これによって事業者が受け取る消費税の総額から、支払った消費税が差し引かれます。その差額が最終的に国に納税され、このしくみによって二重課税が回避されています。

 この仕組みにより、消費税は事業者と消費者の双方において公平に分担され、経済全体で円滑な税収の流れが実現されています。

仕入税額控除の適用要件

 仕入税額控除を受けるためには、法定事項が書かれた帳簿と請求書を7年間保存する必要があります。ただし、2023年10月から始まるインボイス制度により、請求書への法定事項の記載が変更されているため、注意が必要です。

 なお、欠損金の繰越控除を行う法人は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から10年間(平成30年4月1日以前に開始した事業年度は9年間)にわたり、帳簿などを保存しなければならないことに留意してください。

 以下ではインボイス制度(適格請求書等保存方式)において、帳簿と請求書に必要な記載事項とその違いについて詳しく説明します。

帳簿の保存

 仕入税額控除を適用するための最初の条件は、帳簿に取引情報を正確に記録することです。
帳簿に含まれるべき項目
・取引相手の名称
・購入した日付
・取引の具体的な内容
・税率ごとに分類された取引金額

適格請求書の保存

適格請求書に必要な記載事項は以下の通りです。
適格請求書に必要な記載事項
・適格請求書発行事業者の氏名か名称、および登録番号(法人番号または13桁の数字)
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象である旨)
・税率ごとに区分した上で合計した対価の金額および適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名か名称

仕入税額控除の対象

 課税仕入れの消費税が仕入税額控除の対象です。

 なお消費税の納税義務のない免税事業者からの課税仕入れについても消費税は支払う必要があります。そして、インボイス制度の元でも、要件を満たせば例外的に6年間は、免税事業者へ支払った消費税の一部が仕入税額控除の対象になります。後ほど詳細を説明します。

消費税の仕入税額控除の計算方法

消費税の仕入税額控除の計算方法には以下のものがあります。
消費税の仕入税額控除の計算方法
・全額控除
・個別対応方式
・一括比例分配方式
・簡易課税制度

全額控除

 課税売上高が5億円以下で、かつ課税売上の割合が95%以上の場合に適用されるのが、全額控除方式です。

 全額控除方式は、課税期間中に発生した課税売上の消費税額から、同じ課税期間中に発生した課税仕入れなどによる消費税 額を完全に差し引く方法です。課税仕入れの消費税をまるごと控除でき、かつ一括で計算できるため手続きが簡便です。

個別対応方式

 個別対応方式は、すべての仕入に関連する消費税額を、課税、非課税、および両方に共通するものに分けて計算する手法です。

一括比例配分方式

 一括比例配分方式は、すべての仕入にかかる消費税額を、課税売上の割合をかけて仕入税額を計算する手法です。

簡易課税制度

 課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、かつ「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出している場合は、簡易課税方式を選択して仕入税額控除額を計算できます。計算方法は以下の通りです。
売上に対する消費税額 × みなし仕入率
みなし仕入率は、事業内容に応じて設定されています。

事業者が注意すべきポイント

 事業者は原則として、前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納付が免除されます。インボイス制度では、免税事業者との取引における消費税は基本的に、仕入税額控除の対象外となります。

 ただし制度が始まってから6年間は、一定の要件を満たせば、仕入税額の一部を控除できます。2023年10月から2026年9月までは80%、2026年10月から2029年9月までは50%が控除できる割合です。

 この経過措置の適用を受けるためには帳簿の保存要件などを満たす必要があります

帳簿の保存要件

 通常の帳簿に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れであることを示す記載が必要です。これには、次の項目が含まれます。
・課税仕入れの相手方の氏名または名称
・課税仕入れを行った年月日
・課税仕入れに関連する資産や役務の内容
・経過措置の適用を受ける旨の明記
・課税仕入れにかかる支払対価の金額
経過措置の適用を受ける旨に関しては、個々の取引ごとに「80%控除対象」などと具体的に記載するほか、例えば「※」や「☆」などの記号を使用し、これらの記号が経過措置の適用を受ける課税仕入れであることを示すように表示する方法も認められます。

請求書等の記載事項

・請求書の作成者の氏名または名称
・課税資産の譲渡等が行われた年月日
・課税資産の譲渡等に関連する資産や役務の内容
・税率ごとに合計された課税資産の譲渡等の税込の金額
・請求書を受ける事業者の氏名または名称
 上記に加え、請求書等に税率ごとに合計された課税資産の譲渡等の税込の金額などが記載されていない場合、受領者がこれらの情報を自ら追記して保存することが許容されます。

まとめ

 仕入税額控除は、消費税の納税金額を決定する上で極めて重要な要素となります。消費税の計算方法には複数のアプローチが存在し、企業の経理担当者はこれらの異なる計算方法を理解し、企業にとって最も有益な方法を見極める必要があります。また、柔軟性を持ち、必要に応じて計算方法の変更や最適化を提案できる能力も求められます。

 それぞれの計算方法にはメリットとデメリットが存在し、経理担当者は企業の特定の状況や業種に応じて最適な方法を見極める必要があります。これらの方法を的確に選択することは、企業の経済的な健全性と税務上の効率性を高めるうえで極めて重要です。

 法令の変更や新たなビジネスモデルの導入などにより、仕入税額控除の計算方法に変更が生じた場合にも迅速かつ適切に対応する必要があります。

 仕入税額控除は企業にとって不可欠な税務手続きであり、経理担当者は知識と柔軟性を駆使して、最適な計算方法を見極め、変化に適応できる体制を構築することが求められると言えるでしょう。

 今回の記事が皆様の仕入税額控除に関する理解を深めるきっかけとなれば幸いです。

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