税務調査とは?必要な対応などをわかりやすく解説

2024.05.10

税務調査とは?必要な対応などをわかりやすく解説

 税務調査は全ての企業が受けるわけではありませんが、毎年実施されています。法人だけでなく、個人事業主も対象となるため、いつ税務調査が行われても不思議ではありません。

 今回は、「税務調査って何をするの?」や「指摘があった場合、どのように対処すればいいのか?」といった疑問に分かりやすく答えるため、税務調査について解説します。

税務調査とは

 税務調査は納税者の方が提出した申告書類が正確かを確認するために行われる調査のことです。

税務調査がよく行われる時期

 税務調査は基本的に企業の決算時期に関連しており、これには一定の傾向が見られます。

 通常、2月から5月にかけての決算を行う企業は、税務調査が7月から12月にかけて行われやすい傾向があります。逆に、6月から1月にかけての決算を行う企業は、調査が一般的に1月から6月にかけて実施されることが一般的です。特に、3月に決算を行う企業が多いため、税務調査が9月から12月にかけて集中することがよく見られます。

 この時期に行われる税務調査は、企業の財務状況や取引履歴に対する税務署の厳格な審査を含み、納税者が法的な義務を果たしているかどうかを確認するためのものです。企業はこの時期に備え、適切な税務申告と記録の整備を重視することが求められます。

税務調査(任意調査)の手順

税務調査(任意調査)の場合、通常は以下の手順に従います。

1.税務署からの通知

 最初に、税務署から税務調査を行う旨の通知があります。通常は電話が一般的ですが、必ずしも通知があるわけではありません。また、税理士が申告書に税務代理権限証書を添付して提出していた場合、税務署は税理士に直接連絡することもあります。

2. 調査日程の調整

 通知の後は、税務署と調査の実施日を調整します。実施日は、仕事が忙しい日を避けたり、事業主や企業の都合に合わせることができます。調査実施日に税理士が立ち会う場合は、その都合も考慮して日程を調整することが重要です。顧問税理士がいなくて不安な場合は、新たに税理士を見つけることもおすすめします。

3. 必要書類の用意(税理士がいれば相談)

 税務調査の前に必要な書類を整えます。顧問税理士がいる場合は、税務調査の前に税理士と打ち合わせを行い、揃えるべき資料に不備や漏れがないかを確認できます。調査当日には聞かれそうなポイントや、誤りでなくても税務署との見解が異なりそうな項目なども予測して、事前に準備しておきましょう。

4. 調査日の実施

 税務調査当日、税務調査官が企業や店舗、事務所などを訪れます。税務調査の実施期間についてはケースによって様々で、おおよそ2日間にわたって行われることが多いです。

5. 税務署の指摘に回答(税理士がいれば税理士が対応)

 訪問に基づき、税務署からの指摘や質問に対応し、必要な資料を用意して回答するプロセスがあります。顧問税理士が不在の場合、事業者自身が対応し、税理士がいる場合は税理士が交渉を担当します。

税務調査のリスクが高まる法人の特徴

事業規模が大きい

 通常、利益や収益が著しく高い法人は、その相応の税金を納めています。税制上、このような企業は多額の課税対象となり、誤りがある場合、納税すべき金額が大きく変動する可能性があります。そのため、税務署においてはこれらの企業に対しては極めて慎重な対応が求められ、申告における正確性と透明性が特に重要視されます。

売上や利益が大きく変動している

 特定の年度において企業の売上や利益が著しく変動している場合、その企業は税務調査の対象になりやすくなります。例えば、利益が急激に増加または減少した場合や、黒字から赤字に転換した場合など、極端な変動が見られるケースは特に税務当局の留意を引きます。

 これは、急激な変動が通常の業績変動とは異なり、税務申告において潜在的なリスクがある可能性があるからです。

不正が多い業種

 国税庁によれば、風俗業、飲食店(バー、大衆酒場など)、および廃棄物処理などの特定の業種において、不正が発覚する割合が高まっています。これらの業種に分類される法人は、税務署が特に注意を払い、「調査が必要なケース」とみなしているようです。

 特定の業種が焦点とされる背景には、これらの事業が複雑であり、税務申告において潜在的なリスクが高まることが影響している可能性があります。風俗業や飲食店などでは現金取引が一般的であることから、収益の正確な把握が難しくなり、廃棄物処理業では環境への影響が絡むため、税務申告において厳密な審査が行われる傾向があります。

過去の税務調査で指摘を受けている

 以前に申告漏れなどの指摘を受けた場合、税務署は申告内容に誤りや不正がないかを疑いやすくなります。これに関連して、以前の指摘事項を遵守しているかを確認する必要があり、そのためにも調査の対象になりやすいと言えます。

税務調査で誤りが指摘された際の対応方法

 税務調査の結果、申告内容に誤りがあると指摘された場合、修正申告または更正の手続きが必要です。修正申告は元々よりも少なく申告していた場合の手続きであり、一方で更正の請求は元々よりも多く申告していた場合の手続きです。

修正申告を行う

 修正申告は、提出した申告書の内容を正確に修正する手続きです。税務調査で少なく申告したことが分かれば、修正申告をして不足分の税金を支払います。

 ただし、税務調査後の修正申告は納期限を過ぎているため、ペナルティとして過少申告税や延滞税などが発生する可能性があります。申告期限内に自分で誤りに気づいて修正申告した場合には、附帯税はかかりません。

 税務申告が必要でありながら怠った場合、指摘後の税務申告は「期限後申告」となり、無申告加算税がペナルティとして科せられます。ただし、税務調査が始まる前に自発的に申告すれば、このペナルティが軽減されるため、未申告の所得がある場合や税務申告を怠っていた場合は早めに申告することが重要です。

更正の請求を行う

 更正の請求は、本来の納税額よりも多く納めていて、その差額分の返還を求める手続きです。税務調査で税金を過剰に納付していた場合、更正の請求を行うことで余分に支払った税金が戻ってきます。なお、更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内に行う必要がありますが、税務調査によって更正の請求が必要になるケースは通常は少ないです。

経理アウトソーシングと税務調査

 経理アウトソーシングサービスを導入することで、企業は税務調査に面しても安心感を得ることができます。

 これは、経理アウトソーシングが経理の専門家であり、税理士が在籍していれば根拠資料の整理など経理業務上必要な対応を適切に行ってくれるからです。また在籍してなくても、アウトソーシングの担当者が税理士と連携をとってくれるケースが多く、事前にサポートの範囲を確認した上で経理アウトソーシングのサービス選びをすることをお勧めします。

 経理アウトソーシングの提供企業によっては、税理士の介入がない場合もありますが、企業は記帳から支払いまでの経理業務全般をアウトソーシングに委託でき、税務申告書に関連する業務や社内でのミスや不正の防止に寄与するサポートを期待できます。このような確かな体制が整っている場合、税務調査が入ったとしても心配する必要はありません。

まとめ

 税務調査は恐れや緊張を感じることがありますが、顧問税理士に事前に相談し、十分な準備をすることで、冷静に対処できるようになります。税務調査で注目されやすいポイントを確認し、事前にシミュレーションを行うと良いでしょう。

 その際、当日は質問に対して誠実に回答する姿勢を崩さず、質問された内容に絞って回答することが大切です。税務調査での虚偽の回答は困難であり、嘘が発覚した場合の罰則は軽視できないためです。

 処分に不満がある場合は、不服申立てをして争うことも可能です。税務調査に関する問題が発生した際は、まずは顧問税理士や専門の税理士に相談して適切なアドバイスを受けることが重要です。

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