旅費交通費について|仕訳方法・節税方法・注意点など

2024.10.24

旅費交通費について|仕訳方法・節税方法・注意点など

 旅費交通費は日常的に発生する勘定科目です。業務のために会社から遠方の取引先などへ出向く際に使用されます。旅費交通費とその他の交通費を分けずに処理すると、法人税や従業員の所得税の計算が正確にできなくなる可能性があります。

 そこでこの記事では、旅費交通費の定義、該当する経費、そして旅費交通費の精算をより正確に行う方法について解説します。

旅費交通費とは?

 仕事のために遠方へ移動する際にかかる経費を指す旅費交通費には遠方への交通費、宿泊費、食費などが含まれます。また、出張手当などもこれに含まれます。出張時に必要とされる交通費や宿泊費、出張手当などの費用を総称して出張費と呼ぶこともあります。ただし、勘定科目としては「旅費交通費」として記録されるのが通常です。

 旅費交通費はしばしば高額になるため、領収書などの根拠書類による慎重な確認が不可欠です。

 一方、単に交通費と言うと日々の業務活動において発生する移動経費を指すのが通常です。取引先を訪問する打ち合わせや営業活動に伴う移動にかかるバス代・電車代・駐車場代・タクシー代などのことです。通勤手当も交通費として計上されます。

 交通費は主に近距離移動にかかる費用なので、領収書が発行されないこともよくあります。そのため、移動区間などがはっきりしていれば、領収書が不要とされる場合もあります。

旅費交通費に含まれる項目

 旅費交通費は、遠方への出張など業務に関連する移動にかかる費用を指しますが、具体的には通常、以下のような項目が含まれます。

・タクシー代
・電車代
・航空運賃
・有料道路通行料
・駐車場代
・バス代
・出張時の宿泊費、食事代、日当
・転勤に伴う移動費用

 同じタクシー代で考えても出張など業務目的で使った場合は旅費交通費として計上されます。一方で、接待や懇親会などの社内外交流活動で使った場合は交際費になります。また通常、転勤に関連する移動費用も旅費交通費に含まれます。旅費規程によっては家族にかかった費用の分も旅費交通費として認められる場合があります。

 宿泊費についてですが、長期の出張などで宿泊を伴う場合、宿泊費は旅費交通費に含まれます。ただし、以下の点に留意する必要があります。

 一つ目は宿泊費の金額です。会社ごとに宿泊費の上限が決められているのが通常で、この上限を超える費用は経費として認められず、社員の負担となります。会社によっては、一律の宿泊費を支給し、それを範囲内で管理する場合もありますので、詳細を確認しましょう。

 二つ目は食事の有無です。宿泊先には朝食付きのプランがあることがありますが、仕事に関係のない食事代は経費として認められません。したがって、朝食代は旅費交通費として計上されないのが通常です。

 駐車場代やガソリン代については「旅費交通費」・「車両費」・「燃料費」といった勘定科目に該当します。実際にどの科目に仕訳するかについては明確な決まりはありません。

 食事代については出張で発生する場合でも、普段の業務で発生する食事代は一般的に経費として認められません。ただし取引先との会食など、業務に直接関係する場合は、交際費として経費として扱われることがあります。経費の扱いに関する詳細は会社の規定によりますので、十分に確認してください。

 海外出張の場合、旅費や宿泊費には消費税はかかりません。

旅費交通費の仕訳方法

 この章では旅費交通費の仕訳について具体的に説明します。

【出張の際に新幹線の往復料金25,000円を現金で支払った】

借方金額貸方金額
旅費交通費25,000円現金25,000円

【出張に伴いホテル代10,000円を現金で支払った】

借方金額貸方金額
旅費交通費10,000円現金10,000円

【出張後に仮払金の清算を実施した】

借方借方貸方金額
旅費交通費(新幹線代)25,000円現金10,000円
旅費交通費(ホテル代)11,000円
旅費交通費(食事代)4,000円
現金60,000円

旅費交通費の節税効果

 幅広く経費として認められる旅費交通費ですが、消費税の節税にも大きく関わっています。重要な点は「課税仕入れ」として経費計上できるかどうかです。

 課税仕入れとは、企業が消費税を申告する際に課税売上から控除される仕入れ金額のことです。課税仕入れの金額が大きいほど、納付する税金は少なくなります。旅費交通費はこの課税仕入れとして計上可能であり、業種によってはその金額が大きくなるため、正しく計上すれば節税効果が期待できます。

 また出張手当にも節税効果があります。出張時に発生する宿泊費や交通費などの旅費は、多くの場合、出張者が一旦立替えて後日精算されることが一般的です。そして出張には宿泊費以外にも支出が伴います。そのため、企業が手当の支給を行うこともあります。手当は受け取る側にとっても非課税となるため所得税や住民税の対象外です。また、会社にとっても支給した手当は経費として計上され、税制上のメリットが期待できます。

 この手当は後日の精算手続きが不要な経費となります。手当によって社員の経済的余裕が増し、出張に対するモチベーションも高まるでしょう。

旅費交通費の注意点

 旅費交通費についての経費精算手続きは複雑になりやすいため、詳細な確認が欠かせません。この章では旅費交通費を精算する際に留意すべきポイントを説明します。

不正申請の有無を確認する必要がある

 旅費交通費については誤った申請が起こりやすいのが特徴です。ただし意図的でなく発生することも少なくないため注意が必要です。

 旅費交通費としての申請に問題がないかや社内規程に違反していないかを確認することが求められます。チェック業務の効率化には、明確な出張旅費規程を設けたり、経理アウトソーシングの利用などが役立つでしょう。

 出張旅費規程には、自社の出張の定義に基づき、旅費交通費に関する申請や承認の基準などを明記しておくと良いでしょう。

ツールやクレジットカードの定期的な確認が必要である

 社内サーバーに経費精算ツールを構築している場合には定期的にメンテナンスする必要があります。メンテナンスを怠りサーバーが故障すれば、仕事が止まったり、重要なデータが失われたりする可能性があるからです。

 メンテナンスについての手間を減らしたい場合は、クラウドベースのツールの導入を検討するのも一案です。

 また旅費交通費に関する支払いに法人のカードを利用していたとしても定期的な確認は必要です。経費以外の物品購入や私的利用など不正に利用される可能性があるからです。

 例えば経理アウトソーシングの利用でチェックを効率化することができます。

人為的なミスは完全には防げない

 通常人手による作業では完全なミスの排除は難しいと言えます。短期的なコストよりも、中長期的な利益を考慮することが重要です。

 経理アウトソーシングを利用すれば経理のプロに手続きを任せることができます。

仕入税額の控除を受けるには通常インボイスが必要

 企業が仕入税額の控除を受けるためには、原則としてインボイスが必要です。従業員が立て替え精算を行う場合、通常は会社宛てのインボイスを提出する必要があります。ただし公共交通機関での支払いが3万円未満の場合は、インボイスの発行が免除されています。

 従業員が立替精算を行う際には「公共交通機関特例」などと精算書に記載することで、インボイスがなくても仕入税額の控除を受けられます。

出張旅費については帳簿のみの保存で認められる場合も

 通常、出張旅費規程には出張に関連する交通費や宿泊費などの諸経費についての取り扱いが定められています。出張旅費規程に従い、日当や出張旅費を支給する場合、「出張旅費等特例」の明記があれば、インボイスは不要で帳簿のみの保存が認められます。ただし、仕入税額の控除の対象となるのは「業務に必要と認められる範囲」のみです。

 「出張旅費規程」が業務に必要であることを示す根拠となるため、日当や交通費などの諸経費を定めておけば、インボイスがなくても仕入税額の控除の対象になります。概算で支払われるガソリン代や手当についてのインボイスは提出できないため、出張旅費規定に定めておけば節税に繋がります。

まとめ

 旅費交通費は金額が大きくなりやすく、経理担当者の負担も小さくありません。不正を防ぐためにしっかりと確認する必要があります。ただし遠方の社員の行動を全部把握するのは難しい場合もあります。特に仮払いは細かい差額が生じやすく、現金を扱うため金庫内の金額にズレが生じることもあります。

 経理アウトソーシングを利用してプロに手続きを頼むことも検討しましょう。

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