交際費について|概要・注意点・節税方法などを解説

2024.09.06

交際費について|概要・注意点・節税方法などを解説

 企業活動において日常的に発生する経費の中で、特に複雑であり適切な管理が求められるものの一つが「交際費」です。会社のイメージ向上や業務の円滑化のために必要不可欠な支出でありながら、その取り扱いには厳格なルールと正確な会計処理が求められます。

 そこでこの記事では、交際費の定義からその会計処理のポイントまで詳しく解説します。

交際費とは?

 交際費とは、法人が事業に関係のある者に対して行う接待、慰労、贈答などに支出される費用を指します。ビジネス上の関係者とのコミュニケーションや信頼関係の構築を目的とし、一般的には会食やゴルフ、お中元などが含まれます。福利厚生費や会議費などと類似する支出もありますが、それぞれの適切な使い分けについての理解が重要です。

交際費の損金算入限度

 交際費は原則として損金として認められないものの、会社の規模に応じて特定の例外が設けられており、それに基づいて交際費を損金算入できるケースもあります。以下に、各企業の規模に応じた交際費の上限額を示します。

資本金1億円超の企業

 接待飲食費の50%を交際費として損金に算入できますが、期末の資本金または出資金が100億円を超える法人には交際費の損金算入が適用されません。

資本金1億円以下の企業

 「年間800万円まで」または「接待飲食費の50%まで」のいずれかを選択して損金として計上できます。

 接待飲食費の年間総額が800万円以下であれば、「年間800万円まで」を選択すれば、より多くの費用を損金として計上できます。逆に、年間の接待飲食費が1,600万円を超える場合は、「接待飲食費の50%まで」を選択すればで、算入できる額が大きくなります。

交際費の会計処理に関する注意点

 交際費の会計処理に関する主な注意点として以下の科目との区別をしっかりとつけなければならない点が挙げられます。それぞれについて詳しく解説します。

福利厚生費との区別

 福利厚生費は企業が従業員全体の福祉や健康増進のために支出する費用であり、一方で交際費は、社外の取引先や社内の従業員同士の特定の機会における接待費用を指します。特に社内交際費は、社内の特定の役員や従業員のみを対象とする支出であり、福利厚生費とは異なる点に注意が必要です。

 ■誤解しやすい例
 福利厚生費
 ・全従業員向けの忘年会費用
 ・全従業員向けの健康診断費用
 ・社内規定に基づく慶弔見舞金の支給
 交際費
 ・特定の役員や従業員のみが参加する二次会費用

会議費との区別

 会議費とは、企業が取引先との商談や社内で行う会議など、社内外で開催される会議や打ち合わせにかかる費用を指します。交際費の中で、社外の取引先との飲食費について要件を満たせば1名あたりの費用が、2024年3月末までの分については5,000円以下、2024年4月以降については10,000円以下の場合には「会議費」として計上できます。

 ■誤解しやすい例
 会議費
 ・会議室のレンタル料金
 ・会議用の弁当、飲み物、お茶の菓子の費用
 ・食費のうち、1名あたり10,000円(2024年3月末までの分については5,000円)以下のもの
 交際費
 ・食費のうち、1名あたり10,000円(2024年3月末までの分については5,000円)超のもの

広告宣伝費との区別

 広告宣伝費とは、企業が自社の商品やサービスの購買を促進するために、一般の消費者や顧客に対して行う宣伝活動にかかる費用です。

 取引先に対して、企業名が入ったカレンダーやボールペン、付箋紙などの低コストのプロモーションアイテムを配布する場合には、「交際費」ではなく「広告宣伝費」として処理します。

 ■誤解しやすい例
 広告宣伝費
 ・社名入りのプロモーションアイテムの配布費用
 ・自社製品の試供品やアンケートに対する謝礼費用      
 交際費
 ・取引先への旅行や演劇への招待費 

寄附金との区別

 寄附金とは、対価を期待しないでする金銭や物品の贈与や無償でのサービス提供を指します。

 交際費は、得意先や仕入れ先など自社事業に関係のある相手に対して接待や懇談を目的として行う費用であり、その対価を期待して支出されます。一方、寄附金は一般的に自社と利害関係のない相手先に向けて寄付や拠出金、見舞金などの支出を指します。

 ■誤解しやすい例
 寄附金
 ・国や自治体への寄附金
 ・神社の祭礼に対する寄贈金
 ・被災地などへの見舞金       
 交際費
 ・取引先への贈答費
 ・親睦会やパーティーへの参加費

交際費に関する節税方法

 交際費の限度額については、前述の通り、企業の規模によって変わります。交際費でないものを交際費として計上すれば過大に税金を支払うことになる可能性があります。

 言い換えると交際費でないものを適切に他の勘定科目として計上すれば節税効果を得ることができます。

 例えば上記の勘定科目以外にも取引先との出張を研修費として計上する方法があります。事業活動に関連する取引先や顧客との研修は、交際費ではなく研修費として経費計上が可能です。この方法を用いれば、自然と交際費として計上する金額を減らすことができます。

 ただし、取引先や顧客との研修費として計上するためには、その研修の内容を証明する書類をきちんと保管しておく必要があります。例えば、議事録やプレゼンテーション資料がその証明となります。これらの書類を保管しておくことで、税務上のトラブルを避けることができます。

交際費に関する税務調査について

 交際費に関する税務調査についてはどのような注意点があるのでしょうか。

税務調査で問題視されやすいポイント

 交際費に関して、税務調査で特に指摘されやすいポイントは以下の通りです。

 a)他の勘定科目に混じった交際費がないか
税務調査で例えば交際費が福利厚生費や広告宣伝費として誤って処理されていた場合、交際費として処理し直す必要があります。交際費として会計処理する金額が増えることで、法人税の納税額が増加する可能性がありますので、注意が必要です。

 b)プライベートな支出を交際費としていないか
例えばひとり会社の場合で社長が個人的な目的で行った友人や家族との飲食や旅行を経費として計上していないかについても問題視されやすいポイントです。出張を兼ねて家族旅行をした場合、その費用は損金に算入できません。

 例えば役員個人の個人的な支出として認識された場合、これは「役員への給与(役員報酬)」として取り扱われます。この場合、役員報酬として認定された額が損金算入に影響する他、源泉徴収も必要となります。

 役員個人の所得増加により、追加の所得税も課税される可能性があります。さらに消費税の計算においても、非課税仕入れとして認識されるため、追加の消費税も支払う必要が生じるケースもあります。これらの点についても留意が必要です。

税務調査に備えた準備と対策

 税務調査に備えるためには、日々の業務で記録した仕訳に特に注意を払う必要があります。支出の明細だけでなく、その背景や理由についてもきちんと記録しておくことが肝要です。

 具体的には、次のような情報を記録し、プライベートな支出でないことを証明する準備を整えます。

 ・参加者との関係や人数、氏名
 ・支出の目的や理由
 ・会議であれば会議録などの文書

 これにより、費用の内容を明確に把握し、税務調査官に整然と説明できるようにしておきましょう。日常業務での準備が整っていれば、税務調査に対して過剰な恐れを持つ必要はありません。

 一方で、必要な書類が紛失していたり、帳簿だけでは判断が難しいと見なされた場合は、反面調査へと発展する可能性も考えられます。このような状況になった場合、事実関係を確認するために取引先などに対して情報を問い合わせることが必要です。

 反面調査が進むと、取引先との信頼関係が損なわれるリスクも考慮しなければなりませんので、注意が必要です。

まとめ

 交際費の会計処理は、企業にとって重要な課題です。交際費の管理は企業のイメージ形成にも直結し、適切な費用対効果を見極めることが極めて重要です。また適切な会計処理のためには経理アウトソーシングの導入がおすすめです。

 交際費の会計処理についても対応できる専門知識を持つプロフェッショナルが経理業務を担当することで、業務の正確性と効率性が向上します。特に中小企業においては、限られたリソースをコアビジネスに集中させることが可能となり、経営戦略の策定や市場拡大に注力することができます。

 経理業務は法改正や規制変更に対応する必要があり、最新の知識と技術が求められます。社内で管理するのは大変な負担ですが、専門業者に依頼することで、その負担を軽減できます。

 企業の成長と競争力強化を図るために、是非とも検討すべき選択肢と言えるでしょう。

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