福利厚生費と法定福利費の違いとは?注意点や節税効果について解説

2024.07.24

福利厚生費と法定福利費の違いとは?注意点や節税効果について解説

 福利厚生費と法定福利費は、企業が従業員のために支払う重要な費用です。これらの費用は、それぞれ異なる目的と適用範囲があります。
 本記事では、福利厚生費と法定福利費の違いから、計算方法や会計処理上の注意点、節税につながる活用方法を紹介しています。

福利厚生費と法定福利費の違い

 福利厚生費と法定福利費は、どちらも従業員のために支払う費用であるものの、それぞれ該当する内容が異なります

福利厚生費とは

 福利厚生費とは、企業が従業員のモチベーションを向上させる目的で実施している制度に関連する費用のことであり、売 上に直接関連した費用ではありません。そのため、福利厚生費には、住宅手当、慶弔見舞金、社員旅行などの費用が含まれます。

 これらの費用は、企業が全額を支払うことが一般的です。しかし、金額によっては従業員の給与とみなされることがあります。福利厚生費の消費税の取り扱いは、内容により課税対象と非課税対象が混在しています。

 また、交際費は福利厚生費と間違えやすい勘定科目です。これらの違いを理解することは、正確な会計処理と節税対策に重要です。

法定福利費とは

 法定福利費とは、企業が福利厚生の目的で支払う費用の中で、法律により納付が義務付けられているものです。これには、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険などが含まれます。

 これらの費用は、企業と従業員の間で負担割合が決まっており、両者が一定の割合を負担します。また、法定福利費に関しては、消費税の取り扱いは非課税です。これらは、企業の経営者や会計処理をする経理担当者にとって重要なポイントとなります。

福利厚生費の取り扱い上の注意点

 福利厚生の取り扱いには、以下の3つについて注意が必要です。
 ・上限が決められている
 ・現金や商品券など換金性の高いものは認められない
 ・交際費や会議費との区別が必要

上限が決められている

 以下の3つの費用は、福利厚生費として会計処理できる金額に上限があります。
 通勤手当
 食事代の補助
 社宅
 通勤手当には一定の上限が設けられており、1カ月あたり15万円がその上限となっています。この金額を超えて通勤手当を支給すると、受け取った従業員が所得税を負担しなければなりません。

 また、マイカーで通勤している従業員に対する通勤手当については、2km以上の距離に対しては上限金額が距離に応じて定められています。
 参照:No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当|国税庁

 食事代の補助とは、企業が従業員の昼食代の一部や残業時の食事代などを負担する制度のことです。これは、従業員が食事代として支払った金額の半分以上を企業が負担する、という形が一般的です。

 さらに、特定の計算式を用いて求めた金額が経費として計上できます。さらに、以下の計算式で求めた金額が経費として計上できる金額です。

 (食事の価額)ー(役員や使用人が負担している金額)≦ 税抜3,500円以下 / カ月

 参照:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

 社宅とは、企業が従業員の居住用として所有し、貸与している物件のことです。企業が福利厚生の一環として従業員へ貸与する場合には、以下の3つの計算式のいずれかで求めた金額が経費として計上できます。

 (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
 12円 ×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
 (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 参照:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁

現金や商品券など換金性の高いものは認められはない

 福利厚生費として認められるものは限られており、現金だけでなく、商品券や旅行券など換金性が高いものは福利厚生費としては認められていません。これらを福利厚生の一環として「報奨金」という名目で支給した場合、受け取った従業員は源泉所得税の課税対象となります。

 また、制服も福利厚生費として認められますが、企業以外でも使用可能なものである場合は、経費として認められません。

交際費や会議費との区別が必要

 交際費とは、取引先との接待や慰安、贈答のために要した費用のことです。福利厚生費と区別する方法は、「誰に対して使用したか」で判断します。たとえば、交際費は外部の取引先に対して、今後の取引につながるように使用するためのお金です。

 一方、会議費とは、社内で実施した取引先との打ち合わせで使用した費用のことです。福利厚生費と区別する方法は、令和6年4月1日より1人当たりの費用が10,000以下であり、会議を目的とした集まりであることで判別できます。(令和6年3月31日までに発生したものについては5,000円以下)

参照:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁

法定福利費の取り扱い上の注意点

 法定福利費で計上できる種類は決まっており、それぞれには異なる計算方法が存在し、この計算を誤ると、従業員が将来受け取る年金額に影響を及ぼす可能性があります。

 また、法定福利費は法人に納付する義務もあります。したがって、従業員がこれらの制度に未加入である場合は法律違反となるため注意が必要です。

厚生年金保険料の計算

厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率をかけることで算出されます。従業員負担分は、給与から天引きされます。企業が負担する費用部分は、厚生年金保険料の総額を従業員と企業側で2分の1ずつ折半した額です。

また、厚生年金保険料は給与と賞与の両方で納付されますが、賞与については、企業側が支給日より5日以内に被保険者賞与支払届を提出する必要があります。

参照:Q 厚生年金保険料の計算方法について教えてください。| 日本年金機構

健康保険料の計算

 健康保険料は、標準報酬月額に健康保険料率をかけることで算出されます。従業員が負担する分は、給与からの天引きです。

 協会けんぽの場合、会社の所在地によって料率が異なります。算出した健康保険料の2分の1は従業員が、残りの2分の1は企業側が負担し経費として計上します。

介護保険料の計算

 介護保険料は、40歳以上の従業員が対象です。39歳以下の従業員については、介護保険料は控除されません。介護保険料は、標準報酬月額に介護保険料率をかけることで算出されます。

 算出した健康保険料の2分の1は従業員負担分で給与天引き、残りの2分の1は企業側が負担し経費計上します。納付方法は、健康保険料に介護保険料を上乗せする形です。また、介護保険料率は全国一律で、2024年6月現在では1.60%となっています。

参照:令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます|全国健康保険協会

労災保険料の計算

 労災保険は、雇用形態に関係なく、すべての労働者が対象です。しかし、法人役員は基本的に労災保険の対象外となります。ただし、一部の要件を満たすことで特別加入制度を利用することが可能です。

 労災保険料は、1年分を7月に一括で納付します。ただし、保険料が70万円を超える場合は、年3回に分割して納付することも可能です。

 労災保険料の計算方法は、事業ごとに決められた料率を用いて算出します。全従業員の年度内の賃金総額に労災保険料率をかけることで算出できます。

 参照:労災保険の料率が変わります|厚生労働省

子ども・子育て拠出金の計算

 子ども・子育て拠出金は、児童手当の支給に要する費用等の一部を企業が全額負担するものです。計算方法は、被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額および標準賞与額に拠出金率をかけることで算出されます。2024年6月現在の拠出金率は0.36%です。納付方法は、子ども・子育て拠出金と社会保険料を一緒に支払います。

福利厚生費を節税対策で生かす方法

 法定福利費は、すでに法律で決められているため、規定の範囲内で経費として認められます。一方、福利厚生費は、従業員のモチベーション維持を目的としている場合に認められる経費です。従業員の満足度や生産性を高めるための投資と考えられ、結果的に節税につながる可能性があります。例として挙げられる福利厚生費には、以下の内容があります。
 ・健康診断費用
 ・慶弔費用
 ・レクレーション費用
 ・通勤手当
 ・社宅
 ・食事代の補助
 ・法人が加入する従業員の生命保険料
 健康診断費用は、経営者が従業員の健康管理に配慮するための重要な投資です。また、一部助成が受けられるため、これを積極的に活用することがおすすめできます。

 慶弔費については、社会通念上妥当な金額でなければならず、過度に高額な金額は認められません。

 企業は従業員に万が一の事態が発生した際に支払うことができる資金を確保するため、生命保険に加入できます。この場合の保険料は福利厚生費として計上することが可能です。

まとめ

福利厚生費と法定福利費の違いを正確に理解することで、企業はこれらの費用を適切に管理し、節税対策にも役立ちます。特に、福利厚生費は従業員のモチベーションを向上させるために有効に活用でき、結果として企業全体の生産性向上につながります。また企業には、より健全な経営が実現できるメリットが期待できるでしょう。ただし、これらの計算は煩雑になりがちです。経理代行に依頼することでミスのない会計処理につながります。

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