雑収入とは何か?雑所得や事業所得との違い、仕訳例を詳しく解説

2024.09.20

雑収入とは何か?雑所得や事業所得との違い、仕訳例を詳しく解説

 雑収入は企業・個人が本業とは異なる様々な手段で得ることができる収入のことです。このような雑収入については安定した本業の収入源とは異なるものの、適切に管理し活用すべきものであるといえるでしょう。そこで本記事では雑収入の具体例、会計処理、注意点などについて詳しく探っていきます。

雑収入とは?

 雑収入とは本業以外で発生し、金額が小さい収入を処理するための勘定科目のことです。例えば補助金・助成金、保険金、消費税還付金などを受け取った際に用いられます。

 他に適切な勘定科目が存在せず、発生頻度や金額がさほど重要でない収入をまとめて処理するために雑収入を使います。

 法人の場合、収入の管理のために、法人税申告書の勘定科目内訳明細書に雑収入の内訳を記載することが求められます。雑収入の仕訳を行う際には、補助科目や摘要を使用して内容を明確にしておくことが推奨されます。

雑収入は事業所得に含まれる

 一方、個人事業主の場合を考えてみます。個人事業主の所得は以下の10種類に分類されます。

・利子所得:預貯金や公社債などの利子

・配当所得:株式や投資信託などの配当

・不動産所得:土地や建物の貸付による所得

・事業所得:農業、漁業、製造業などからの所得

・給与所得:勤務先から受け取る給料や賞与

・退職所得:勤務先から受け取る退職手当など

・山林所得:山林を伐採して譲渡した時など

・譲渡所得:土地や建物などを譲渡した時など

・一時所得:懸賞や福引の賞金など

・雑所得:上記9つに該当しない所得

 雑収入は通常上記の10種類の所得のうち「事業所得」に該当します。事業による営業外収益の中で、他のどの勘定科目にも該当しないものや、独立した科目とするほど金額が重要でないものを処理する際に「雑収入」を使用します。

 事業所得は基本的に帳簿付けが必要です。通常の収入は「売上高」勘定で処理されますが、雑収入は「雑収入」勘定で処理します。

雑収入と雑所得の違い

 雑収入が事業所得の一部であるのに対して、雑所得は先ほどの10種類の所得区分の中で他の9つに該当しない所得を指します。例えば、以下のような所得が雑所得に該当します。

 ・公的年金等の受取

 ・作家など以外の人が受ける原稿料など

 ・インターネットオークションでの販売利益

 ・FXや仮想通貨で得た利益

 ・会社員が副業で得た収入のうち、事業所得に該当しないもの

 事業所得として認められるためには、「継続的な収入が得られること」、「儲かる可能性があること」、「相当な時間を費やしていること」、「職業として認知されていること」などが判断基準となります。

 会社員の副業収入は、「片手間に得た所得」とみなされるため、事業性が認められず、ほとんどの場合、雑所得として扱われます。

雑収入の具体例

 ここで雑収入の具体例を見ておきましょう。具体的には以下のようなものが挙げられます。

・保険会社の配当金

・現金過不足

・還付金

・還付加算金

・家賃や地代収入

・保険金や損害保険金

・祝い金

・賠償金

・助成金や補助金

・返還されない預り保証金

・作業屑

・スクラップの売却収入

・消費税の確定申告時の差額調整

 還付金とは、確定申告で所得税を過剰に支払った場合に返還されるお金のことです。法人では、前年の所得税に基づいて予定納税を行うことが多く、稀に還付金が発生します。

 家賃や地代収入は不動産を事業として扱っていない場合が該当します。また、保険金が支払われた場合も一般的には雑収入として処理されます。

 助成金や補助金も雑収入に分類されます。助成金などは支給までに時間がかかるため、決算を超える場合は一時的に未収入金として仕訳します。

 作業屑とは、製品製造工程で発生する価値のある材料くずを指します。例えば、建設現場で発生する木材の端材は、他の用途で使用できる場合があります。これを第三者に売却した収益は雑収入となります。

 鉄製品を扱う業態では、鉄素材の廃材が多く出ることがあり、これをスクラップ業者に引き取ってもらう収益も雑収入に該当します。

雑収入の仕訳の具体例

 この章では雑収入の仕訳の具体例として現金過不足が生じている場合の仕訳について解説します。決算時に現金過不足が生じている場合、その過剰分や不足分を正しく処理する必要があります。

 例えば10,000円の現金過剰が発生した場合の処理方法を見ていきましょう。期中に10,000円の現金過剰が見つかった時点では、帳簿に以下のように記載されていることでしょう。

借方)現金 10,000円 貸方)現金過不足 10,000円

 もし仮に決算までに原因が判明しなかった場合は、次のように帳簿を調整する必要があります。

借方)現金過不足 10,000円 貸方)雑収入 10,000円

 つまり現金過不足勘定の借方にある過剰金を雑収入の貸方に振り替える作業が必要です。

雑収入に関する注意点

 この章では雑収入に関する注意点について解説します。

多くの取引が消費税課税の対象となる

 雑収入が消費税の課税対象となるかどうかは、その取引に対価が存在するかどうかなどによって判断します。「対価」とは、自分の持っている財産や労力を他者に提供して得る報酬や利益のことです。以下に、課税対象となる取引とならない取引の具体例を示します。

 課税取引

 ・駐車場の賃貸収入

 ・自動販売機の設置による収入

 ・代理店手数料

 ・作業屑の販売による収入

 ・スクラップの売却収入

 ・廃材処分の収入

 ・リサイクルによる収入

 非課税取引

 ・地代収入

 ・居住用の家賃収入

 不課税取引

 ・消費税の差額調整

 ・還付加算金の受領

 ・保険金の受領

 ・祝儀

 ・損害賠償金の受領

 ・給付金

 地代収入や家賃収入は、通常「非課税取引」として扱われますが、貸出期間が1ヶ月未満の場合には「課税取引」とされるため、注意が必要です。

雑収入の計上タイミングは当期か翌期かの判断が必要

 雑収入を計上する際には、タイミングに注意が必要です。特に、翌期にわたって給付される給付金や助成金、家賃などは、実際に入金が行われていなくても未収入金として計上する必要があります。

 【例】300,000円の助成金を受け取ることが決まった時点

 借方) 未収入金 300,000円 貸方)雑収入 300,000円

 実際に入金があった際には、同じ収入を再度計上しないように気を付けることが重要です。

 【例】前期に確定していた助成金30万円が振り込まれた場合

 借方)普通預金 300,000円 貸方)未収入金 300,000円

雑収入が過剰になると税務署からの指摘を受ける可能性がある

 決算は、決算日時点での財務状況を明らかにするものであり、損益や負債などを把握し、納税額を確定させるために必要なプロセスです。

 雑収入が売上の中で多すぎると、会社の収入源が不明確になってしまいます。雑収入は「本業の活動に付随して得られた収入」であるため、本業以外で多額の収入があるのは不自然であり、税務署から「脱税しているのではないか?」と疑われる可能性があることには注意しましょう。

 また、雑収入が多すぎて売上の実態が不明確になると、銀行やその他の金融機関からの融資が難しくなる恐れがあります。

 リスクを避けるためには、雑収入の割合は多くしない方が無難でしょう。

まとめ

 雑収入は企業・個人が本業とは異なる様々な手段で得ることができる収入であり、適切に帳簿に記録する必要があります。雑収入の具体的な内容や正しい処理方法を理解し、正確な所得額と税額を計算することが重要です。

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