NEW
役員賞与とは?役員報酬との違いや損金算入方法の解説

2025.04.25

役員賞与とは?役員報酬との違いや損金算入方法の解説

 多くの企業が従業員に賞与を支給していますが、役員に賞与を支給する企業は少数派です。その理由は、原則として役員への賞与は損金算入されないため、税務上経費として認められないからです。

 しかし、役員への「賞与」が税務上認められる場合も存在します。ここでは、損金算入可能な賞与と、損金算入できない賞与について説明します。

役員賞与と役員報酬の違いについて

 役員賞与は、企業の業績や役員個人の成果に基づいて支払われる追加報酬の一種です。一般的に、年に1回から2回、不定期に支給されることが多く、企業の業績が良好な場合や、特定の目標を達成した場合に支給額が増えることがあります。このため、役員賞与にはインセンティブの要素が強く含まれており、経営陣のモチベーション向上やパフォーマンスの最大化を目的とした制度として機能します。

 一方で、役員報酬は役員の職務や役職に応じてあらかじめ定められた金額が支給される報酬であり、企業の業績に関わらず、毎月または毎年、決まった金額が継続的に支払われるのが特徴です。このため、安定した給与体系を構築するうえで重要な要素となり、役員に対して一定の生活基盤を提供する役割を果たします。

 両者を適切に組み合わせることで、役員に対して魅力的で競争力のある報酬体系を構築することが可能です。適切なバランスを考慮した報酬制度を設計することにより、役員のモチベーションを維持しながら、企業の持続的な発展を支援することができるでしょう。

役員賞与の損金算入について

 役員賞与を損金として計上するためには、厳密な規定が存在します。法人税法においては、決算期に突然役員賞与を支給してそれを損金として認めることは基本的にできません。

 役員賞与を損金算入する条件については後ほど詳細を解説します。

役員賞与支給のメリット

 役員賞与を支給することによるメリットの一つは、大きな賞与を一度に支給することで、社会保険料を減少させやすい点です。

 また、法人税は利益に基づいて課税されますが、役員賞与を損金として計上できれば、節税効果を得ることが可能です。

 役員の定期同額給与が低い場合でも事前確定届出給与を活用することで、役員のモチベーションを高めるなど、柔軟に運用することができます。

役員賞与支給のデメリット

 役員賞与の支給は企業のキャッシュフローに直接影響を及ぼすため、計画的に実施することが重要です。

 役員賞与は決算期末などにまとまった金額が一括で支給されることが多く、会社の資金繰りに大きな負担をかける可能性があります。

 過剰な賞与を設定すると、税負担の増加により手元資金が不足し、かえって資金繰りが悪化するリスクがあります。そのため、会社の財務状況を踏まえ、適切なバランスを考えて支給額の決定を実施することが重要です。

役員賞与を損金算入するための方法

事前確定届出給与として役員賞与を支払う

事前確定届出給与とは、役員の職務に基づき、所定の時期に確定した金額の金銭や、一定数の株式(出資も含む)、新株予約権、または確定した額の金銭債権に関連する特定譲渡制限付株式や特定譲渡制限付新株予約権を交付する旨が定められた給与のことです。「定期同額給与」や「業績連動給与」に該当せず、以下の条件を満たす場合に支給されます。

  1.給与が以下のいずれにも該当せず事前確定届出給与の届出をしている
(1)定期的な給与を支給しない役員に、同族会社でない法人が金銭で支給する給与
(2)将来の役務提供に関連する株式や新株予約権で支給される給与
なお(1)または(2)の給与は、事前確定届出給与に関する届出は不要です。

  2.株式を交付する場合にはその株式は市場で取引されている株式、または市場価格のある株式と交換される株式で、当該法人またはその関係法人が発行したものであること。

  3.新株予約権を交付する場合にはその新株予約権は、行使により市場で取引されている株式が交付されるもので、当該法人またはその関係法人が発行したものであること。

業績連動給与制度の活用

 業績連動給与は、企業の業績に応じて役員報酬を支払い、その金額を損金として計上できる制度です。法人やその支配関係にある企業の業績を反映する指標(利益状況や株価など)をもとに算出される報酬のことです。

 金銭や株式、新株予約権が含まれます。また、無償で取得または消滅する株式や新株予約権が、役務提供期間以外の理由で変動する場合も対象となります。損金算入が認められる業績連動給与 は、以下の要件を満たす必要があります。

 対象法人:法人(同族会社の場合は、同族会社以外の法人を完全支配している法人に限る)。

 対象者:法人が業務執行役員に対して支給するもの。

 金銭以外の資産(株式や新株予約権)が交付される場合は、適格株式または適格新株予約権であること。

 適用要件:他のすべての業務執行役員にも、同様の業績連動給与を支給すること。業務執行役員とは、業績連動給与の算定方法が決定された時点で、法人の業務執行を担当している役員を指します。

 他の2つの制度とは異なり、事前に具体的な支給額が確定していない点が特徴となります。

 報酬額の算定には、会社の業績や株価などの客観的な指標が用いられます。適用には複雑な手続きと厳格な条件を満たす必要がありますが、成果主義を導入している企業で多く採用されている仕組みです。要件を満たせば損金計上が可能となるため、経営陣のモチベーション向上を目的としたインセンティブとしても活用できます。

定期同額給与の適用

 定期同額給与とは、役員に対して1カ月以内の間隔で一定額の報酬を支払う制度です。

 一般の従業員に毎月支払われる給与と似た形態になります。

 支給額は株主総会で決定され、事業年度を通じて各回の支給額が同じであることが特徴です。あらかじめ定めた金額を定期同額給与として支給することで、役員賞与とすることもできます。

事前確定届出給与に関する注意点:役員賞与・報酬の届出には期限がある

 事前確定届出給与を損金として計上するためには、届出期限を守ることが必要です。では具体的にはいつまでに届出を提出すればよいのでしょうか。届出の締切は、次の2つのうち早い方の期限となります。

  • 会計期間開始日から4か月が経過する日
  • 株主総会などで役員報酬を決定してから1か月が経過する日

 たとえば3月決算の会社が5月25日に株主総会を開き、役員報酬を決定した場合届出期限は6月25日までとなります。

 もしこの期限を1日でも過ぎてしまうと、正しく支給していたとしても「届出なし=損金不算入」という厳しい扱いを受けます。「うっかり忘れた…」では済まされません。

 さらに、新設法人や役員改選がある場合などは届出期限が異なるケースもあるため、スケジュール管理が欠かせません。

 「賞与を支給する前に、まず届出!」という意識を常に持っておきましょう。

まとめ

 以上ここまで役員賞与について解説してきました。

 企業における役員賞与の適正な取り扱いは税務リスクを回避し、企業の財務健全性を維持するために非常に重要な要素です。

 役員賞与は、法人税法上、損金算入には一定の要件が求められます。役員賞与は経営陣の業績や企業の実績に基づき決定されるべきであり、その支給に関しても決議が正当に行われた証拠が必要となります。適切な処理を施さなければ、税務リスクが発生する可能性もあります。

 役員賞与の税務の取り扱いに関してご不明点は税理士等の専門家に相談するのが良いでしょう。税制改正に伴う対応や最新の税法の動向に関する知識の相談を行うことができます。

 そして役員賞与の妥当な金額の算出には、会計アウトソーシングを活用し正確な業績を把握することが非常に効果的です。

 経営陣は日々の業務に集中することができ、財務関連業務を外部の専門家に任せることによって、経営資源を最適化することができます。

 企業の成長とともに、複雑化する財務管理において、会計アウトソーシングの導入は、経営者にとって重要な選択肢となります。経営の効率化を図るためにも、会計アウトソーシングを積極的に活用することをお勧めします。

経理BPOならBPIOにお任せください

 株式会社BPIOが展開する「BPIO」は、バックオフィス業務を3つの軸で改善するBPOサービスです。
 経理・労務・総務等のバックオフィス業務の代行だけでなく、業務設計やDX支援など幅広く業務を支援します。
業務を効率化し、コア業務に集中できる環境をご提供し、関わる全ての会社に最適なバックオフィス環境を実現するBPOサービスです。

 ご興味がありましたら、ぜひ一度下記のボタンよりサービス概要のご確認や、お気軽にお問い合わせくださいませ。