企業経営が複雑さを増す昨今、経営のスピードと精度を高めるには、決算の早期化が欠かせないといえます。
そこで本記事では、決算早期化の必要性や得られる効果に加え、実現に向けた具体的なアプローチや注意点などを解説していきます。
決算早期化とは?その目的

決算早期化とは、決算作業の完了時期を前倒しし、速やかに決算情報を公開することを指します。
この取り組みにより、自社の経営状況を迅速に把握できるようになり、経営判断のスピード向上にもつながることから、近年多くの企業で注目されるようになっています。
その主な目的は以下の通りです。
売上や利益を正確に把握できるようになること
決算は、経営分析を行うための重要な基礎データとなります。決算処理を早めることで、事業の状況をいち早く把握でき、売上の見通しや営業利益の予測などもスピーディーに作成可能となります。
こうした情報を早く手に入れることで、売上目標の達成が難しい部分や、利益が見込みより少ない領域を速やかに特定し、適切な対策を早期に講じることができます。あわせて、経理処理における誤りも早い段階で検知しやすくなるため、ミスの影響を最小限に抑えることにもつながります。
残業時間の圧縮
決算を迅速に完了させるには、経理業務の効率化が欠かせません。
業務の効率が上がれば、経理担当者の負担も軽くなり、自然と残業時間の短縮につながります。さらに、決算を早めることで、経理部門の繁忙期がこれまでよりも短期間で済むため、人件費の削減にも効果的です。
作業に余裕が生まれた分、経営資料の作成など、付加価値の高い業務にも取り組むことが可能になります。
決算早期化のメリット

経営判断のスピードアップ
決算データが早期に揃うことで、事業の分析に着手する時期も前倒しできるようになります。これにより、売上や利益の見通しといった財務状況を迅速に把握できるため、会社としての方向性や戦略の見直しを早い段階で行うことが可能です。
早めに財務の現状を確認することで、改善すべき課題に素早く気づくことができ、経営判断を下すうえでも有利に働きます。
また、市場環境の変動にも柔軟かつ迅速に対応しやすくなるという点も、大きな利点です。
投資家や金融機関からの信用向上
決算を早期に締めることで、株主や取引先などの関係者に対して、鮮度の高い最新の経営情報を速やかに提供できるようになります。こうした「タイムリーな情報開示への取り組み」は、金融機関や投資家からの信頼感を高める要因となります。
今後、事業を拡大していく過程で、融資の申し込みや出資の増額といった資金調達が必要となる場面も考えられるでしょう。
決算の早期化が実現していれば、このような成長フェーズで、企業にとって好意的な評価を得やすくなるという利点があります。
経理業務の効率向上
決算の早期化に取り組むことは、業務プロセスを見直す良い機会となります。業務フローを見直すことで、無駄な作業や重複作業が明確になり、結果として業務の効率が向上し、コストの削減にもつながります。
さらに、作業負担の軽減により、経理担当者の業務負荷が軽くなり、業務に対する意欲の向上も期待できます。
決算早期化のボトルネック

決算早期化には多くの利点がありますが、すべての企業がスムーズに実現できるわけではありません。企業ごとにさまざまな障壁が存在し、思うように進まないケースも多々あります。
このセクションでは、決算早期化を目指す際にしばしば直面するボトルネックを取り上げ、それぞれの要因について詳しく見ていきます
月末・月初に業務が集中して逼迫する
経理部門では月末月初に締め処理や請求対応などの業務が集中する傾向があり、これに決算業務が加わることで大きな負担となります。この業務集中により、日々の処理に追われて決算業務の効率化や改善にまで手が回らず、決算早期化の取り組みが後回しになることも。
さらに、時間に追われる中でチェック体制が不十分となり、ヒューマンエラーが発生しやすくなるリスクもあります。特に作業の多くが手作業で行われている場合、その傾向は顕著です。
各科目の残高数値の確定に時間がかかる
勘定科目の金額がなかなか確定しないことも、決算を遅らせる原因のひとつです。
経理部門は他部署から提出される伝票や資料に依存しているため、処理の遅れがそのまま決算業務の遅延につながります。また、連結決算を行っている企業では、子会社や関係会社との連携が必要になり、その分さらに時間がかかることがあります。
経理人材の確保が難しい
経理部門の人材不足も、決算の迅速化を阻む大きな要因です。採用難や人件費削減の影響で、経理部門の体制が十分に整っていない企業も多く見られます。
加えて、決算業務が特定の経験者に依存して属人化している場合は、担当者が不在になると業務が止まってしまうリスクもあります。
決算早期化を実現するためのアプローチ

決算業務をスピーディに完了させるためには、いくつかの基本的な対策を講じることが効果的です。主なポイントは次のとおりです。
決算業務のフローを見直す
まずは現在の決算に関わる業務内容や手順、作業負荷を洗い出し、改善の余地がある部分を把握しましょう。たとえば、無駄な業務を削減したり、紙で行っている処理をデジタル化することで、全体の効率が大きく向上します。
この見直しでは、作業内容をなるべく細分化し、どの工程で時間がかかっているのかを明確にすることが重要です。
各科目の残高に関する資料の提出タイミングを前倒しする
他部門から受け取る必要書類や伝票類の提出期限を前倒しすることで、決算作業の遅延を防ぎやすくなります。
多くの企業では、2~5営業日程度、従来の期限より早める対応を取っています。
決算の早期化がなされず遅延することによるデメリット

企業経営において欠かせない月次決算ですが、その作業が遅れることで、さまざまな不都合が生じる可能性があります。主な影響を以下にまとめました。
経営判断のタイミングが遅れる
決算は、経営層に対してタイムリーな経営情報を提供するための重要な手段です。
しかし、決算に時間がかかってしまうと、その間に意思決定のスピードが鈍化し、ビジネスチャンスを逃してしまう恐れがあります。
たとえば、売上が予想を下回っていた場合、早期に状況を把握していればすぐに改善策を講じることができたはずです。
外部環境の変化が激しい現代においては、柔軟かつ迅速な経営判断を下すためにも、月次決算の迅速化が重要な鍵となります。
資金繰りの見通しが立てづらくなる
企業の安定した運営には、資金の流れをいち早く把握し、先々の資金計画を立てることが不可欠です。
決算を迅速に完了させることで、1ヵ月後や数か月先、さらには1年後の資金状況を予測し、最適な投資のタイミングを判断する材料となります。
反対に、決算が遅れると、資金繰りの問題を早期に発見することができず、投資判断を見送るなど、機会損失が発生するリスクが高まります。
ミスの発見が遅れて対応コストが増加する
業務量が多い経理部門では、入力ミスや計算間違いが生じることもあります。しかし、決算が遅れると、こうしたミスの発見も遅れがちになります。
時間が経過するほどに原因の特定が困難となり、対応に余計な手間や時間がかかってしまう可能性も高まります。
その結果、人的コストや修正作業が膨らみ、全体的な業務効率の低下にもつながってしまいます。
このように、決算の遅延は経営判断や資金管理、業務効率など、企業運営の根幹に影響を与える要因となります。早期化の取り組みは、組織全体の生産性向上と経営の健全化に向けた重要な施策です。
まとめ

ここまで決算の早期化について解説してきましたが、決算の早期化の一つの手段として会計アウトソーシングの利用が考えられます。
決算の早期化には社内リソースだけでは迅速な対応が難しい場合も多く、業務負担の増加も課題となります。
会計アウトソーシングを利用し専門知識を有する外部のプロフェッショナルに日常的な経理処理から決算業務までを委託することで以下のようなメリットが得られます
- 社内の業務負担軽減と人的ミスの抑制
- 決算の精度向上による決算準備の効率化
- 外部専門家による最新の会計基準への対応
- 本業への集中による生産性の向上
会計アウトソーシングを活用することで、決算準備にかかる時間を大幅に短縮し、よりスピーディーで正確な経営判断が可能となります。
決算の早期化をお考えの企業様には、ぜひ一度ご検討いただきたい選択肢です。
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