退職者の年末調整はどうする?担当者が行うべき対応と不要なケース

2025.11.06

退職者の年末調整はどうする?担当者が行うべき対応と不要なケース

企業の経理や労務を担当していると、年末調整の時期に「年の途中で辞めた従業員の年末調整はどうすればよいか?」という疑問に直面することがあります。

退職した従業員本人から問い合わせが来るケースもあるかもしれません。結論から言いますと、年の途中で退職した従業員の年末調整は、原則として企業側で行う必要はありません。

しかし、一部例外的なケースも存在し、企業として必ず行うべき対応もあります。

この記事では、企業の担当者向けに、退職者の年末調整に関する基本的なルール、企業が行うべき実務、例外パターンについて詳しく解説します。

退職者の年末調整は原則不要?基本ルール解説

まず、年末調整の基本的な仕組みと、なぜ退職者の年末調整が原則不要なのかについて確認します。

年末調整の対象となる人

年末調整は、その年の1年間に支払った給与・賞与から源泉徴収した所得税額と、本来納めるべき年間の所得税額を一致させるための手続きです。

この手続きの対象となるのは、原則として「その年の12月31日時点で企業に在籍している従業員」です。

具体的には、年末調整を行う日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をその企業に提出している人が対象となります。企業は、在籍している従業員のその年1年間の給与総額を基に所得税を再計算し、過不足を調整(還付または追加徴収)します。

年の途中で退職した人はどうなる?

年の途中で退職した人は、原則として「12月31日時点での在籍者」という条件から外れます。そのため、退職した企業において年末調整の対象とはなりません。

退職者は、その年1年間の所得(退職した企業からの給与や、その後の転職先からの給与、その他の所得など)をすべて合算し、自分で所得税の申告と納税を行う必要があります。この手続きが「確定申告」です。

つまり、年の途中で退職した人の所得税の精算は、原則として退職者本人が行う確定申告によって完結することになります。

企業が退職者に行うべき対応は源泉徴収票の発行

退職者の年末調整は原則不要ですが、企業側には退職者に対して必ず行うべき重要な手続きがあります。それが「源泉徴収票の発行」です。

源泉徴収票の発行義務とタイミング

企業(給与支払者)は、退職者に対して「給与所得の源泉徴収票」を交付する義務があります。(所得税法第226条)

源泉徴収票には、その年にその企業が退職者本人に支払った給与・賞与の総額と、源泉徴収した所得税額などが記載されています。この源泉徴収票は、退職者が転職先で年末調整を受けるため、または自身で確定申告を行うために必須の書類です。

発行するタイミングは、退職日から1ヶ月以内に交付することが法律で定められています。実務上は、最後の給与が確定した後、速やかに発行・送付するのが一般的です。

記載内容の注意点

源泉徴収票を作成する際は、その年の1月1日から退職日までに支払いが確定した給与・賞与の総額を正確に記載する必要があります。社会保険料の控除額や、すでに徴収した源泉所得税額も誤りなく記載してください。

退職者の場合、源泉徴収票の「摘要」欄に退職年月日を記載することが望ましいです。これにより、受け取った側(転職先企業や税務署)が、年の中途で退職したことが明確にわかります。

退職者から年末調整を依頼されたら?

退職者から「年末調整をしてほしい」と依頼されるケースもあるかもしれません。知識がなかったり、確定申告の手間を省きたいと考えたりして、依頼してくる場合が想定されます。

この場合、原則として「年の途中で退職された方は、弊社での年末調整の対象外となります」と丁寧に説明する必要があります。

その上で、「転職先で年末調整を受けるか、ご自身で確定申告を行うために必要な『源泉徴収票』を(いつ頃)送付します」と案内するのが適切な対応です。

源泉徴収票がいつ頃届くのかを具体的に伝えると、退職者も安心できると考えられます。

例外!企業で年末調整が必要となる退職者

原則として不要な退職者の年末調整ですが、特定の条件に該当する場合は、企業側で年末調整を行う必要があります。

実務上、間違いやすいポイントでもあるため、しっかりと確認してください。

12月分の給与を受けて退職した人

12月中に退職した人で、その12月分の給与(その年、最後の給与)を受け取った後に退職した場合は、企業側で年末調整を行う必要があります。

例えば、給与の締め日が15日、支払日が25日の会社で、12月25日に給与を受け取り、12月31日に退職する場合などが該当します。

このケースでは、退職者が12月31日時点で在籍こそしていないものの、その年の給与が全額確定しているため、企業側で税額の精算が可能です。

ただし、12月分の給与が翌年1月に支払われる場合は、対象外となります。あくまで「年内に最後の給与支払いが完了している」ことが条件です。

死亡により退職した人

従業員が年の中途で死亡により退職した場合、その年の1月1日から死亡日までに支払いが確定した給与について、企業が年末調整を行う必要があります。

この場合、相続人が手続きを引き継ぐことになるため、扶養控除などの申告内容を確認し、年末調整を行います。この年末調整の結果(源泉徴収票)は、相続人が行う準確定申告の際に、故人の給与所得を申告するために必要となります。

海外転勤などで非居住者となった人

年の途中で海外支店への転勤などにより、日本の「非居住者」(1年以上海外で勤務する予定などの場合)となった場合も、出国日までに支払いが確定した給与について年末調整を行う必要があります。

出国前に本人が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していることが前提です。

退職者の状況別|企業担当者の対応ポイント

退職者がその後どのような状況にあるかによって、企業担当者が求められる対応や、問い合わせへの回答内容が変わってきます。

転職先が決まっている場合

退職者が年内に別の会社へ転職した場合、その年の年末調整は転職先の企業が行います。退職者は、前の会社(自社)から受け取った源泉徴収票を、転職先の企業に提出する必要があります。

転職先の企業は、自社が支払った給与と、前の会社が支払った給与を合算して、年末調整を行います。担当者としては、退職者から「転職先に提出するので源泉徴収票が欲しい」と連絡があった場合、速やかに発行・送付する対応が求められます。

年内に再就職しなかった場合

年内に再就職しなかった場合(翌年以降に就職、または個人事業主になる、扶養に入るなど)は、退職者本人が翌年に確定申告を行う必要があります。

自社から支払った給与と、源泉徴収された所得税額を基に、退職者自身が税務署で申告します。医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を除く)、生命保険料控除なども、この確定申告で合わせて行うことになります。担当者としては、退職者から確定申告の方法について尋ねられるかもしれませんが、企業が詳細を指導する義務はありません。

「お送りした源泉徴収票を使って、ご自身で確定申告を行ってください」と案内し、不明点は税務署や税理士に相談するよう促すのが適切です。

退職者の年末調整に関するQ&A

ここでは、退職者の年末調整に関して、実務でよく寄せられる質問にお答えします。

Q.源泉徴収票の再発行は義務ですか?

A.義務ではありませんが、原則で応じる必要があります。
所得税法上、給与支払者は源泉徴収票を交付する義務があります。退職者が紛失などを理由に再発行を依頼してきた場合、企業はこれに応じる義務があると解されています。

源泉徴収票は、退職者が転職先での年末調整や確定申告を行う上で不可欠な書類です。発行履歴を管理し、依頼があった際は速やかに対応できるようにしておくことが望ましいです。

Q.パートやアルバイトが退職した場合も対応は同じ?

A.はい、雇用形態にかかわらず対応は同じです。パートやアルバイトであっても、企業と雇用契約を結び給与を支払っている従業員であることに変わりはありません。

年の途中で退職した場合は原則として年末調整の対象外となり、企業は源泉徴収票を発行・交付する義務を負います。例外的に年末調整が必要となる条件(12月退職や死亡退職など)も、正社員と同様に適用されます。

Q.退職金にも年末調整は必要ですか?

A.退職金(退職所得)は、通常の給与(給与所得)とは別に所得税が計算されます。退職者が退職金を受け取るまでに「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、企業側で退職所得控除などを考慮して所得税を計算・徴収し、その残額を退職者に支払います。

この手続きは給与の年末調整とは異なり、退職金支払い時に税額計算が完結するため、別途年末調整を行う必要はありません。申告書の提出がない場合は、一律20.42%の税率で源泉徴収し、退職者本人が確定申告で精算することになります。

まとめ

退職者の年末調整について、企業の担当者が行うべき対応を解説しました。

  • 年の途中で退職した従業員の年末調整は、原則として企業で行う必要はありません。
  • 企業が行うべき義務は、退職後1ヶ月以内に「源泉徴収票」を発行・交付することです。
  • 例外として、「12月分の給与を受けて退職した人」や「死亡退職した人」などは、企業で年末調整を行う必要があります。
  • 退職者は、受け取った源泉徴収票を使い、転職先で年末調整を受けるか、自身で確定申告を行います。

年末調整の時期は、経理・労務担当者にとって非常に多忙な時期です。在職中の従業員の対応に加えて、退職者への対応も発生しますが、ルールを正しく理解し、源泉徴収票の発行などを漏れなく行うことが重要です。

本記事が、貴社のスムーズな年末調整業務の一助となれば幸いです。

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