毎月の経理業務において、最も神経を使う作業の一つが「取引先への支払い」ではないでしょうか。「月末に集中する大量の請求書を処理し、期日までに正確に入金手続きを行う……」少しのミスが信用問題に発展しかねないプレッシャーの中で、いかに効率よく、かつ正確に業務を進めるかは、多くの経理担当者様が抱える課題かと思います。
そんな煩雑な支払い業務を整理し、ミスを未然に防ぐための強力なツールが「支払予定表」です。
本記事では、「言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何を作成すれば良いのかわからない」という方に向けて、支払予定表の基本的な定義や役割から、実務での作り方、導入によるメリットまでを分かりやすく解説します。日々の経理業務をワンランクアップさせるためのヒントとして、ぜひご一読ください。
支払予定表とは?基本的な役割を解説

支払予定表は、特に多くの仕入先や取引先を抱える企業において、その支払い管理を円滑にするために活用される書類の一つです。まずは基本的な定義と、混同しやすい他の書類との違いについて解説します。
支払予定表の定義と目的
支払予定表(しはらいよていひょう)とは、特定の期間(通常は1ヶ月ごと)に、複数の取引先(仕入先)に対して行う支払いの内容を集計し、一覧にした書類を指します。
主な目的は、社内(経理部や承認者)において「どの取引先に、いつ、いくら支払うのか」という全体の支払い状況を正確に把握・管理することです。
企業が商品やサービスを購入(仕入れ)すると、取引先ごとに請求書が発行されます。支払予定表は、締め日(月末など)でそれらの請求内容を取りまとめ、支払い予定額を一覧にしたものです。これにより、経理担当者は支払い漏れや二重支払いといったミスを防ぎ、正確な支払い処理を行うことができます。
また、この集計データを元に、取引先ごとへ個別に「支払通知書(または支払明細書)」を作成・送付するケースも一般的です。これにより、取引先側も「どの請求分がいつ入金されるのか」を正確に把握でき、売掛金の消込(入金管理)がスムーズになるというメリットがあります。
※社内用と社外用の違い:一般的に、社内管理用には全取引先を網羅した「支払予定表(支払一覧表)」を用いますが、取引先へ送付する際は、情報漏洩を防ぐため、各社の情報のみを記載した「個別の支払通知書」を作成して送ります。
支払予定表と関連書類(支払明細書・請求書)との違い
支払予定表と混同されやすい書類に「支払明細書」や「請求書」があります。これらの違いを明確にしておきましょう。
- 請求書(せいきゅうしょ):これは取引先(売り手)が、自社(買い手)に対して、提供した商品やサービスの対価を請求するために発行する書類です。個々の取引内容や合計金額、支払期限などが記載されています。支払予定表を作成する際の元データとなるものです。
- 支払明細書(しはらいめいさいしょ):これは自社(買い手)が、取引先(売り手)に対して、支払う金額の内訳を通知するために発行する書類です。「支払通知書」と呼ばれることもあります。多くの場合、個別の取引先ごとに作成されます。例えば、A社からの今月の請求額10万円に対し、前回の相殺分2万円を差し引いて8万円を支払う場合、その内訳(請求額、相殺額、支払額)を記載してA社に送付します。
- 支払予定表(しはらいよていひょう):これは主に自社(買い手)の内部管理用、または取引先への通知用として作成されます。内部管理用としては、複数の取引先への支払い予定を一覧にまとめ、支払いの承認を得たり、振込手続きの元データとしたりするために使用されます。取引先への通知用としては、支払明細書と同様の役割(「今月は合計〇〇円お支払いします」という通知)で使われることもありますが、一般的には「支払明細書」の方が個別の取引内容を示す意味合いが強いと考えられます。
まとめると、「請求書」は売り手から発行され、「支払明細書」は買い手が個別の売り手に対して発行する明細、「支払予定表」は買い手が全体の支払い予定を管理・集計するために作成する(または全取引先への支払いをまとめた)一覧表、という違いがあります。
支払予定表を作成するメリット

支払予定表の作成は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、作成することで経理業務において多くのメリットが期待できます。
支払い業務の正確性向上
最大のメリットは、支払い業務の正確性が格段に向上することです。
多くの取引先から送られてくる請求書を一件ずつ処理していると、どうしても見落としや処理漏れ、二重支払いのリスクが発生しがちです。
支払予定表を作成するプロセスで、期間内の全請求内容を一覧化し、合計金額を算出します。これにより、個々の請求額と支払予定額の突合作業が容易になります。また、上長や承認者も一覧表で全体の支払い状況を把握できるため、内部統制の観点からも有効です。
買掛金管理の効率化
支払予定表は、買掛金(かいかけきん:仕入れはしたが、まだ支払っていない代金)の管理にも直結します。
月次で支払予定表を作成することで、その時点での買掛金の残高や支払い予定額が明確になります。これは、企業の資金繰り(キャッシュフロー)を管理する上で非常に重要な情報です。
「今月は総額いくらの支払いが必要か」を正確に把握することで、資金ショートのリスクを回避し、計画的な資金運用が可能となります。
支払予定表の作成方法と主な記載項目

では、実際に支払予定表はどのように作成すればよいのでしょうか。決まったフォーマットはありませんが、一般的に含まれるべき項目と作成の流れを解説します。
支払予定表に記載すべき項目
支払予定表には、支払い内容を正確に把握・伝達するために、以下の項目を含めるのが一般的です。
- 作成日・対象期間:いつ作成した書類か、いつの期間(例:202X年10月度)の支払いか。
- 自社情報:自社の会社名、住所、連絡先、担当部署名など。
- 取引先情報(一覧):支払先コード、取引先名。
- 支払い関連情報(取引先ごと):
―繰越金額:前月までに未払いだった金額(もしあれば)。
―当月発生額(仕入額):当該期間中に発生した請求額の合計。
―消費税額:請求額に含まれる消費税額(内訳として明記)。
―その他調整額:値引き、返品、相殺などの金額(+/−)。
―当月支払予定額:実際に当月支払う金額。
―支払方法:銀行振込、手形、小切手など。
―支払日:支払いを行う予定日。
―備考:特記事項(例:振込手数料の負担など)。
- 総合計:全取引先への支払予定額の合計。
内部管理用であればより詳細な情報を、取引先への通知用(支払明細書として)であれば、その取引先に関する情報のみを抜粋して記載します。
作成のタイミングと流れ
支払予定表は、通常、月次の締め処理のタイミングで作成されます。
- 請求書の収集・照合:月末などの締め日までに、全取引先から当月分の請求書を収集します。届いた請求書の内容が、自社の発注内容や納品書と一致しているかを確認(照合)します。
- データ入力・集計:会計ソフトや販売管理システム、あるいはExcelなどの表計算ソフトに、請求書情報を入力し、取引先ごとの支払い金額を集計します。
- 支払予定表の作成:集計データをもとに、支払予定表を作成します。各取引先の繰越残高、当月発生額、調整額、支払予定額などを正確に記載します。
- 承認:作成した支払予定表を、経理担当の上長や責任者が確認し、支払いの承認を得ます。
- 取引先への送付(必要な場合):支払明細書として取引先に送付する必要がある場合は、このタイミングで送付します。
- 支払い処理:承認された支払予定表に基づき、支払日に合わせて銀行振込などの支払い手続きを実行します。
テンプレートやシステムの活用
毎月手作業で支払予定表を作成するのは、手間がかかり、ミスも発生しやすくなります。
多くの企業では、ExcelやGoogleスプレッドシートで独自のテンプレートを作成し、効率化を図っています。インターネット上でも多くの無料テンプレートが公開されているため、それらを参考に自社用にカスタマイズするのも良い方法です。
さらに効率化を進めるのであれば、会計ソフトや販売管理システム、ERP(企業資源計画)システムの導入が有効です。これらのシステムでは、日々の取引データを入力するだけで、請求書の照合から支払予定表の作成、さらには振込データ(FBデータ)の作成までを自動化できるものが多くあります。
業務の規模や取引先数に応じて、最適なツールを選ぶことが重要です。
支払予定表を作成・運用する際の注意点

支払予定表は便利な書類ですが、その運用にはいくつか注意すべき点があります。
記載内容の正確性を担保する
当然のことながら、支払予定表に記載する金額や日付、取引先名に誤りがあってはなりません。
特に、請求書との照合ミス、入力ミス、集計ミスは、支払いの遅延や過払い・未払いといった重大なトラブルに直結します。
作成時にはダブルチェックを徹底し、可能であればシステムを導入してヒューマンエラーを減らす工夫が必要です。もし誤りが判明した場合は、速やかに修正し、関係各所に連絡することが求められます。
取引先とのフォーマットの確認
支払予定表を支払明細書として取引先に送付する場合、そのフォーマットや記載内容について、事前に取引先と認識を合わせておくことが望ましいです。
特に、相殺処理や値引きが発生する場合、どの取引分からの調整なのかを明確に示さなければ、取引先が売掛金の消込処理(入金と売掛金を紐付ける作業)を行えずに混乱する可能性があります。
お互いの経理処理がスムーズに進むよう、必要な情報が過不足なく記載されたフォーマットを共有することが大切です。
関連する法制度や保存義務への対応
経理業務で作成した書類は、作成して終わりではありません。法人税法などの法律により、一定期間(一般的には7年〜10年)の保存が義務付けられています。
支払予定表も、支払いの事実や経理処理の根拠を示す重要な証憑(しょうひょう)書類の一つとなり得ます。そのため、後々の税務調査などでスムーズに提示できるよう、適切な方法で管理・保存しておく必要があります。
また、近年はペーパーレス化の流れに伴い、書類をデータで保存する場合のルール(電子帳簿保存法など)も整備されています。「紙で出力して保存するのか」「データのままサーバーに保存するのか」など、自社の運用が最新の法制度や社内規定に則っているか、定期的に確認することが重要です。
支払予定表に関するQ&A

最後に、支払予定表に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q.支払予定表は必ず作成する必要がありますか?
A.前述の通り、支払予定表の作成は法律で義務付けられているわけではありません。そのため、作成しなくても法的な問題はありません。
しかし、取引先が少数で、支払い管理が煩雑でない場合を除き、多くの企業で支払い業務の正確性担保や内部統制の観点から、何らかの形で支払い予定を一覧化する書類(支払予定表や支払一覧表など)が作成されています。
Q.どのくらいの頻度で作成・送付しますか?
A.一般的には、月ごと(月次)で作成されます。多くの企業が月末締め・翌月払いなどの月単位で取引を行っているためです。
取引先への送付(支払明細書として)も、支払日より前のタイミング(例:支払日の数日前)で、月次で行われるのが通常です。
Q.電子データでの送付は問題ありませんか?
A.はい、問題ありません。近年はペーパーレス化の推進により、PDFなどの電子データで支払予定表(支払明細書)を送付する企業が非常に増えています。
メールや専用のWebシステムを通じて送付することで、郵送コストの削減、業務の迅速化、送達確認の容易さといったメリットがあります。
ただし、取引先によっては紙での送付を希望する場合もあるため、事前に取引先の意向を確認し、合意の上で運用方法を決定するのが最善です。
まとめ:支払予定表で経理業務の精度を高めよう

支払予定表は、企業の支払い業務における「羅針盤」とも言える重要な書類です。
その役割は、単に支払い予定を一覧にするだけでなく、支払いミスを防ぎ、取引先との信頼関係を維持し、さらには自社の資金繰りを安定させることにも繋がります。
毎月の経理業務で支払予定表を適切に作成・活用することは、経理担当者の業務効率化だけでなく、会社全体の経営基盤を強固にすることにも貢献すると考えられます。
まずは自社の支払いプロセスを見直し、支払予定表(あるいはそれに類する一覧表)が効果的に運用されているかを確認してみてはいかがでしょうか。もし作成や管理に課題を感じている場合は、会計システムの見直しや導入を検討することも、解決策の一つとなるかと思います。
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