年末調整の時期が近づくと、経理担当者の業務量は一気に増加します。中でも「扶養控除」の確認作業は、従業員一人ひとりのプライベートな家族情報に関わるため、慎重かつ正確な対応が求められます。
「アルバイトをしている子供は扶養に入るのか?」「同居している親の年金収入はどう判断すればいいのか?」
こうした疑問に対して、経理担当者は正確な知識を持って判断しなければなりません。もし扶養控除の判定を誤ってしまうと、後から税務署の指摘を受けて追徴課税が発生したり、従業員に再調整の手間をかけさせてしまったりするリスクがあります。こうしたトラブルは、会社の信用問題にも発展しかねません。
本記事では、実務担当者が特に間違いやすいポイントや、リスクを回避するためのチェックフローを中心にお伝えします。正確で効率的な業務遂行のために、ぜひお役立てください。
扶養控除とは?経理担当者が押さえるべき基本

年末調整において、扶養控除は最も確認頻度が高く、かつミスが起こりやすい項目の一つです。対象となる親族の範囲や所得要件は細かく定められており、従業員の自己申告だけに頼っていると、思わぬ間違いを見落としてしまうことがあります。まずは、扶養控除の基本的な仕組みと、なぜ経理担当者が厳密に確認しなければならないのか、その背景から理解していきましょう。
実務における重要性とリスク
扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象となる親族がいる場合に、一定額の所得控除を受けられる制度です。経理実務においては、単に制度を知っているだけでなく「従業員の申告内容が税法上の要件を満たしているか」を見極める目が重要になります。
誤った控除を適用してしまうと、本来納めるべき税金が不足することになります。これが数年後に税務調査などで発覚した場合、会社側で是正処理を行わなければならず、場合によっては延滞税や加算税といったペナルティが発生する可能性もあります。また、従業員に対して過去に遡って追加徴収を行うことは、心情的なしこりを残す原因にもなりかねないため、入り口での正確な確認が何よりも大切です。
年齢別で見る扶養控除の区分と控除額

システム入力の際、生年月日による区分の判定ミスは頻繁に起こります。
扶養控除は、原則となる「一般」の区分があり、そこから特定の年齢層に該当する場合に控除額が増減する仕組みになっています。基本を押さえた上で、以下の区分を必ず確認できるようにしておきましょう。
一般の控除対象扶養親族(16歳以上)
まず基本となるのがこの区分です。その年の12月31日時点の年齢が16歳以上の親族は、原則として「一般の控除対象扶養親族」となり、38万円の控除対象となります。 この38万円をベースとして、以下の「特定」や「老人」といった年齢要件に該当する場合に、控除額が加算されていくイメージを持つと分かりやすいでしょう。
16歳未満の年少扶養親族の取り扱い
16歳未満の子供は「年少扶養親族」と呼ばれます。現在は、児童手当の支給に伴い、所得税上の扶養控除の対象外(控除額0円)となっています。
しかし、ここが間違いやすいポイントなのですが、住民税の非課税限度額の算定には「扶養親族の人数」としてカウントされます。そのため、扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」への記載は必須です。「控除額が0円だから入力しなくていい」と判断してシステムに入力しないと、住民税の計算が誤ってしまう可能性があります。
高校生・大学生世代(特定扶養親族)の特例
19歳以上23歳未満の親族は「特定扶養親族」として区分され、控除額が63万円と最も高く設定されています。教育費の負担が大きい世代への配慮と考えられます。
ここで特に注意が必要なのが「早生まれ」のケースです。特定扶養親族の判定は「その年の12月31日時点の年齢」で行います。たとえ大学1年生であっても、早生まれで12月31日時点で18歳であれば、特定扶養親族(63万円)ではなく一般の控除対象扶養親族(38万円)となります。学年ではなく年齢基準であることを徹底しましょう。
同居老親等とそれ以外の老人扶養親族
70歳以上の親族についても、同居か別居かで控除額が異なります。
- 同居老親等(58万円):納税者またはその配偶者の直系尊属で、普段同居している人
- 老人扶養親族(48万円):上記以外の人(別居している親など)
判断に迷うのが「病気で入院している場合」と「老人ホームに入居している場合」です。入院のために別居している場合は、一時的なものとして「同居」とみなされますが、老人ホーム等の施設に入居している場合は「別居」扱いとなるのが一般的です。
(例:大学1年生であっても、早生まれ(1月〜3月生まれ)で、その年の12月31日時点で18歳の場合は「特定扶養親族」ではなく「一般の控除対象扶養親族」となります)
「配偶者控除」と「扶養控除」の混同に注意

経理業務を始めたばかりの方が最も悩みやすいポイントの一つが、配偶者とその他の親族の扱いの違いです。日常会話では家族全員を指して「扶養に入れる」という言葉が使われますが、税金の計算においては、相手が配偶者なのか、それ以外の親族なのかによって適用する法律や入力項目が明確に異なります。ここを曖昧にしたまま処理を進めると、システムエラーや計算ミスの大きな原因となります。
配偶者は扶養控除の対象外である理由
実務初心者の方が混乱しやすいのが、配偶者の扱いです。税務上、配偶者は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の対象であり、「扶養控除」の対象ではありません。
年末調整の申告書や給与計算システムにおいても、配偶者とその他の扶養親族は入力欄が明確に分かれています。ここを混同して入力してしまうと、正しい税額計算ができないばかりか、源泉徴収票の記載内容も誤ってしまいます。配偶者は「源泉控除対象配偶者」の欄で管理することを意識してください。
配偶者特別控除との兼ね合い
配偶者の給与収入が103万円を超えた場合、配偶者控除は受けられなくなりますが、収入に応じて「配偶者特別控除」が受けられる可能性があります。現在は、配偶者の年収が150万円以下であれば、納税者本人が満額の控除(38万円)を受けられる仕組みになっています(納税者本人の所得制限あり)。
「103万円を超えたから扶養(控除)はゼロになる」と早合点せず、配偶者特別控除の適用可否を確認することが重要です。
従業員の申告内容を確認する際のチェックポイント

従業員から回収した扶養控除等申告書をチェックする際、ただ漫然と空欄が埋まっているかを確認するだけでは不十分です。記載内容と実際の生活実態に乖離がないか、税法上の要件を満たしているか、プロの視点で精査する必要があります。ここでは、特に見落としがちで、かつ間違いが発生しやすい重要チェックポイントを整理しました。
収入と所得の違いを従業員へ周知する
従業員は「年収103万円」という言葉は知っていても、「所得48万円」の意味を正確に理解していないことが多々あります。よくある間違いとして、交通費を含んだ金額を収入として申告してしまったり、手取り金額で判断してしまったりするケースが見受けられます。
- 交通費:通常、非課税限度額内であれば収入(給与収入)には含みません。
- 遺族年金・障害年金:非課税所得のため、税法上の扶養判定の収入には含みません。
- 失業保険(基本手当):非課税ですが、社会保険の扶養判定では収入とみなされます(税扶養とは基準が異なります)。
このように「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の基準が混在していることも、ミスが起きやすい要因です。経理担当者からは「税金の扶養判定では、交通費を含まない総支給額で判断してください」と明確にアナウンスする必要があります。
仕送りの事実確認が必要なケース
別居している親族(修学中の子供や田舎の親など)を扶養に入れる場合、「生計を一にしている」ことの証明として送金の事実確認が重要です。特に、海外に居住する親族については、近年要件が厳格化されており、親族関係書類や送金関係書類の確認が必須となっています。
国内居住であっても、単に「現金を手渡しした」という口頭確認だけでは、税務調査の際に証拠として不十分とされるリスクがあります。銀行振込の明細書や現金書留の控えなど、客観的な証明書類の提出を求めるフローを確立しておくことを推奨します。
複雑な年末調整業務を効率化する方法

年末調整業務は、短期間に膨大な量の書類確認とデータ入力をこなさなければならない、経理部門にとって最大の繁忙期です。しかし、限られた社内リソースだけで毎年の法改正対応や細かなチェック作業を行うには限界があります。業務品質を維持しつつ、担当者の負担を軽減するための具体的なアプローチについて解説します。
煩雑な確認作業を外部委託することで得られるメリット
ここまで解説してきたように、扶養控除の確認作業は非常に細かく、専門的な知識が求められます。さらに、法改正も頻繁に行われるため、社内リソースだけですべてを完璧に対応し続けるのは非常に困難です。
最近では、こうした定型業務を外部の専門機関に委託するアウトソーシングの活用が進んでいます。ただし、導入にあたっては役割分担の理解が不可欠です。「税務書類の作成」や「具体的な税務相談」などの一部業務は、税理士法により税理士のみに許された独占業務であるため、BPIOでは対応できません。
例えば、扶養控除の実務に付随する事務作業など、煩雑な作業をBPIOに依頼するだけでも、担当者の負担は劇的に軽減されます。
それにより、経理担当者が本来注力すべきコア業務(経営分析や資金繰りなど)に時間を割けるようになることから、リスクヘッジと業務効率化の両面から、外部リソースの活用は有効な手段と考えられます。
扶養控除の実務に関するQ&A

最後に、実務の現場で頻繁に発生する、判断に迷いやすい事例をQ&A形式でまとめました。「この場合はどう判断すればいいのか?」と迷った際や、従業員からイレギュラーな相談を受けた際の参考にしてください。
Q1.内縁の妻や夫は扶養控除の対象になりますか?
A.対象になりません。税法上の扶養親族や配偶者控除の対象となる配偶者は、民法の規定による配偶者(戸籍上の婚姻関係がある者)に限られています。したがって、いわゆる事実婚のパートナーは、たとえ生計を一にしていても扶養控除等の対象にはできません。
Q2.遺族年金を受け取っている親は扶養に入れますか?
A.入れる可能性が高いです。遺族年金や障害年金は非課税所得であるため、税金計算上の「合計所得金額」には含まれません。そのため、遺族年金以外に大きな収入(給与や不動産所得など)がなければ、所得要件(48万円以下)を満たし、扶養控除の対象とすることができます。
Q3.海外に留学中の子供は扶養控除の対象ですか?
A.一定の要件を満たせば対象になります。留学中の子供が「非居住者」に該当する場合、令和5年分以降は、年齢や留学ビザ等の書類確認など要件が細かく設定されています。30歳未満であれば基本的には対象ですが、30歳以上70歳未満の場合は「留学により国内に住所等を有しなくなった者」として、送金関係書類だけでなく、留学ビザなどの書類提示が必要となります。
まとめ:扶養控除の複雑な確認業務は専門家やアウトソーシング活用も検討を

扶養控除の実務は、家族構成の多様化やグローバル化に伴い、年々複雑になっています。「知らなかった」では済まされない税務の世界において、すべてのケースを社内の担当者だけで判断し、完結させようとすると、担当者の精神的・時間的負担は計り知れません。
リスクを回避し、かつ業務を効率化するためには、正しい知識を持つことはもちろんですが、外部のリソースやシステムをうまく活用することも一つの賢明な経営判断といえます。正確な年末調整を実現し、会社と従業員双方の安心を守るために、業務フローの見直しやアウトソーシングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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