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役員報酬の決定は、会社経営において重要なポイントです。適切な報酬設定は、役員のモチベーション向上や企業の成長に役立ちます。本記事では、会社法に基づく役員報酬の決定方法を詳しく解説し、節税対策や注意すべきポイントについても触れます。
役員報酬の決め方
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役員報酬は会社法により「定款または株主総会の決議によって定める」ことが規定されています。中小企業や小規模法人の場合、役員報酬について定款で定めていないことが多く、ほとんどの企業が株主総会の決議で決定していることが一般的です。
役員報酬は取締役・監査役・執行役などの会社役員に支払われる報酬です。全額損金計上できるため、節税効果が期待できます。
株主総会の決議で金額を決定
株主総会で役員報酬の総額枠を決めます。大枠を決めるのみのため、役員ごとの報酬金額は取締役会または代表取締役に一任されます。
役員報酬を決める方法には2種類あります。1つは、株主総会で各役員の報酬金額を直接決める方法、もう1つは、株主総会で総額を決めて取締役会で内訳を決定する方法です。
上場企業などでは、役員報酬の決め方が具体的に定められていない場合、取締役会で決定することが2021年3月1日より義務付けられました。
従業員給与との違い
給与は雇用関係がある従業員に支払われるものです。そのため、雇用関係がない役員は経営者に該当するため、給与ではありません。
給与は、従業員が労働の対価として受け取るものです。役員は経営者であるため、労働の対価は発生しません。ただし、給与の場合は損金に計上するルールが役員のときほど厳しくない特徴があります。
金額を決める時期は事業年度開始から3カ月以内
役員報酬を損金算入するためには、根拠資料として議事録を作成・保存しておかなければなりません。場合によっては、税務調査の際に確認されることがあります。
役員報酬を設定する際は、同規模程度に当たる他社の相場を把握することが重要です。他者との比較で著しく乖離がある場合は、適正な報酬額ではないと判断されます。
会社設立時に当たる起業1年目の場合、設立日から3カ月以内に決める必要があります。もし、3カ月を超えてしまうと損金として扱えないため、注意が必要です。
会社設立時は設立日から3カ月以内
例えば、11月3日に会社を設立するなら、3カ月後の2月2日までに臨時株主総会を開催して役員報酬を決定する必要があります。
役員報酬で節税できる3つの支給方法
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役員報酬を損金算入するためには、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかで支払う必要があります。
1. 定期同額給与
定期同額給与とは、事業年度ごとに毎月の給与額が同額で支給されている役員報酬です。定期同額給与を改定する場合、事業年度開始日から3か月以内に行われる株主総会等の決議による定期改定、役員の現状の変更や業務内容の重大な変更があった場合の臨時改定事由に該当している、経営状況の考慮による業績悪化改善事由の3つに限定されます。
臨時改正事由や業績改善事由による改正は、減額のみが認められています。増額改定は認められていないため、注意が必要です。もし、定期同額給与の権利を満たさない役員報酬の改定を行った場合、増額または減額された額が損金として認められません。
2. 事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、役員賞与を損金計算するための制度です。所定の時期に確定した金額の報酬等を事前に税務署へ届出書を提出し報酬を支払います。
届出の期限は、株主総会等の反省日から1か月以内、または会計期間開始日から4か月以内と定められています。上限のみを定めたものや経営成績等により変動するものは含まれず、届出額と実際の支給額が異なる場合、極限が損金不算入となる点には注意が必要です。
3. 業績連動給与
企業の業績に応じて役員報酬を支給する制度です。会社の業績が悪化した場合、役員報酬が減額する可能性があります。
業績が一定ではない企業の場合、会社に入るキャッシュの増減を含め取り入れる意味はありますが、安定した収益を持つ会社には取り入れる意味がないため向いていません。
業績連動給与を採用するメリットは、経営者に対して中長期の企業価値を生み出すインセンティブが与えられます。同時に、柔軟な報酬設計が可能になり優秀な人材を企業内外から確保しやすくなります。
役員報酬を決める4つの注意点
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役員報酬を決める際には、次の4つの注意点があります。
1. 個人と会社の税金負担割合を考慮する
役員個人の所得税と会社の法人税のバランスを考慮する必要があります。「役員報酬を支給すれば法人税の節税効果が高くなる」と、役員報酬を増額すれば、法人税よりも所得税率の方が高いため、結果的に税金を多く納付する結果になります。
その他にも、社会保険料の負担を考慮した最適な報酬設計が必要です。報酬があがればその分、社会保険料も増加します。
さらに、役員退職金の税務上の取り扱いや役員報酬の損金算入限度額の確認をしておく必要があります。
2. 役員賞与の支給には事前確定届出給与の届出が必要
役員賞与として事前確定届出給与を支給する場合、税務署への届出の期限は、以下2つのうち早い方を採用します。
- ・事前確定届出給与を定めた株主総会などの決議をした日または職務を開始する日から1か月以内
- 会計期間開始の日(事業年度開始の日)から4か月以内
届出内容は変更ができるものの、臨時改定事由と同様にやむを得ない事情があった場合です。増額変更はできないと言えます。また、変更する場合は、事前確定届出給与に関する変更届出書を税務署へ提出します。
3. 同業他社と比較し高額すぎない
業界別の役員報酬の相場を知る必要があります。自社と同等規模の会社と比較して著しく報酬が高い場合、過大役員報酬として税務署より指摘される可能性があります。
会社規模や業績、役員としての職務内容に応じた適正報酬を支給しなければなりません。過大役員報酬と見なされた場合、法人税は本来の利益よりも少なかったと判断され修正申告と追徴課税が必要になります。
報酬相場を把握する
妥当な役員報酬を算定するには、業界団体や調査会社の報酬データを活用する方法があります。例えば、有価証券報告書からの情報収集や役職別・企業規模別の報酬相場の傾向をつかむことが大切です。
4. 役員の範囲を正しく把握する
役員報酬と認められるためには、会社法上の役員と税務上の定義と範囲を正しく把握しなければなりません。
取締役
取締役とは、会社の経営に関する重要な意思決定を行う立場です。会社の代表者として、対外的な業務を行います。株主総会で選任され、株主に対して責任を負う立場であり、業務執行を行う執行役員を監督する目的もあります。報酬は、株主総会で決定されることが一般的です。
執行役
執行役とは、取締役の決定に基づき、会社の業務執行を行う立場です。各部門の責任者として、業務を統括する役割を担います。取締役会に出席し、業務執行状況を報告する義務があり、報酬は、取締役会で決定されることが一般的です。業績に応じて、賞与が支給されることもあります。
監査役
監査役とは。取締役の職務執行を監査する立場です。会社の会計監査を行う役割があります。株主総会に出席し、監査報告を行うことも必要です。独立性を確保するため、報酬は固定給であることが一般的と言えます。
会計参与
会計参与とは、会社の会計監査を補佐する立場です。会計に関する専門知識を持っています。取締役会に出席し、会計に関する意見を述べるやくわりがあり、報酬は、取締役会で決定されることが一般的です。専門性の高さに応じて、報酬も高額になる傾向があります。
会計監査人
会計監査人とは会社の会計監査を行う立場です。この役割を担うのは、公認会計士または監査法人です。主な業務は、監査報告書を作成し、株主総会へ提出することであり、報酬は、会社との契約によって決定されます。独立性を確保するため、報酬は監査業務の対価として支払われます。
まとめ
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役員報酬の決定には、株主総会の決議に基づき適切な経費処理が重要です
どのような手順で届出を提出すればよいのか、一般的にどの程度の役員報酬の金額が多いのか、自社で判断できない場合は経理代行サービスの利用をお勧めします。経験豊富な経理代行サービスを利用すれば、同業他社の相場から一般的なアドバイスが受けられるでしょう。
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