NEW
インボイス制度導入で控除対象外になる消費税とは?処理方法と注意点を解説

2024.11.21

インボイス制度導入で控除対象外になる消費税とは?処理方法と注意点を解説

 インボイス制度の導入にともない、多くの事業者が控除対象外消費税の処理に疑問をもつのではないでしょうか。本記事では、控除対象外消費税の定義、処理方法、そして注意すべきポイントについて詳しく解説します。

インボイス制度における控除対象外消費税とは

 控除対象外消費税は、事業者が支払った消費税のうち、仕入税額控除の対象とならない部分のことです。これは以下の条件で発生します。

・非課税売上高がある:事業者が非課税および課税売上の両方がある
・簡易課税制度を採用している:中小事業者が簡易課税制度を選択した
・個別対応方式を採用している:課税売上割合が95%未満の場合に個別対応方式を選択した
・課税売上高が5億円を超える事業者が95%ルールの適用対象外

控除対象外消費税は以下2つに分類でき、それぞれで処理します。

  1. ・資産に係る控除対象外消費税額等
  2. ・上記以外

法人企業は法人税法、個人事業主は所得税法で、これらは特定の方法により損金または必要経費に算入されます。

インボイス制度における控除対象外消費税の処理方法

 インボイス制度における控除対象外消費税の処理方法は、事業者の経理方式により異なります。税込経理において特別な処理は不要です。一方、税抜経理では課税売上高や課税売上割合に応じて発生し、資産に係るものとそれ以外で処理が異なります。適切な処理により、事業者は正確な税務報告を行い、リスクを軽減できます。

消費税が税込経理の場合

 税込経理の場合、消費税額および地方消費税額は資産の取得価額あるいは経費の額に含まれるため、特別な処理は不要です。この方式は会計処理が簡単で、取引の都度計算する必要がないため、小規模事業者や免税事業者に適しています。

消費税が税抜経理の場合

 税抜経理方式を採用した事業者は、控除対象外消費税額等を「資産に係るもの」と「それ以外に係るもの」に区分する必要があります。この区分に基づき、主に以下3つの方法で会計処理を行うことが求められます。

・資産の取得価額に算入し、償却費で損金算入
・特定条件下で損金経理を要件として損金算入
・繰延消費税額等で資産計上し、一定期間で損金算入

一方、それ以外は、原則として損金経理により当期の損金に算入します。

 税抜経理では、本体価格と消費税を区別して記帳します。この方式では、仮払消費税や仮受消費税などの勘定科目を用いて別途管理が必要です。これにより、減価償却資産の取得価額の正確な把握や、より精密な損益計算が可能となります。控除対象外消費税額等が発生する主な条件は、以下が挙げられます。

・課税期間における課税売上高が5億円を上回る
・課税売上割合が95%を下回る

 税抜経理方式を採用しこれらの条件に該当すると、仕入税額控除の対象とならない仮払消費税等が生じます。この控除できない部分が、控除対象外消費税額等として扱われます。

 このような状況下では、事業者は仕入れに係る消費税の一部または全部を控除できないため、適切な会計処理と税務申告が必要です。

控除対象外消費税等が資産に係る場合

 対象となる資産は棚卸資産、固定資産、繰延資産ですが、前払費用は除外され、その処理方法は資産の種類や金額によって以下の3つに分かれます。

・資産の取得価額に算入し、以後の事業年度で償却費として損金算入
・特定条件下で損金経理を要件として事業年度の損金に算入
・繰延消費税額等として資産計上し、一定期間で損金算入

 上記にある「特定の条件」とは、以下のいずれかに該当するときです。

  • ・課税売上割合が80%以上の事業者
  • ・棚卸資産に係る控除対象外消費税等
  • ・一の資産に係る控除対象外消費税等が20万円を下回る場合

 このとき、全額を当該事業年度の損金として計上することが認められています。一方、これらの特例に該当しないときは、繰延消費税額等として扱われます。このときの処理方法は以下の通りです。

・均等償却(60ヶ月)

 この方式を採用することで、控除対象外消費税額等が企業の財務に与える影響を長期間にわたって平準化できます。

 また、資産関連の控除対象外消費税額等の処理を行う際には、法人税の確定申告時に重要な手続きがあります。具体的には法人別表16(10)の明細書が必要です。この明細書は、以下の2点を記載します。

  • ・控除対象外消費税額等の計算過程
  • ・採用した処理方法を詳細

 税務当局が各企業の処理を適切に評価できるよう、この明細書は正確かつ詳細に記入することが求められます。

控除対象外消費税等が資産以外に係る場合

処理方法は資産に係る場合と異なり、以下がその主な対象です。

1.経費に係るもの
2.交際費等に係るもの

2の処理には以下の点に注意が必要です。

  • ・別表15の「支出交際費等の額の明細」に記載が必要
  • ・交際費等の損金不算入額の計算に含める

会計処理においては、租税公課等の勘定科目で処理します。資産に係る場合と異なり、特別な償却や期間配分は不要です。

インボイス制度における控除対象外消費税の注意点

 インボイス制度導入後は、適格請求書発行事業者以外からの仕入れが原則として仕入税額控除の対象外です。そのため、資産に係るものとそれ以外に分けて処理する必要があります。

 前者については、取得価額への算入、即時損金算入、または繰延消費税額等としての資産計上のいずれかの方法で処理が必要です。ただし、これらの処理方法は条件に応じて適用されるものであり、任意に選択できるわけではありません。一方、後者は、原則としてその事業年度の損金または必要経費に算入します。

 ただし、交際費等に係る場合には注意が必要です。これは交際費等の額に含めて損金不算入額を計算する必要があります。また、インボイス制度導入後は、免税事業者等からの仕入れに係る消費税を対価の額に含めて処理することが求められます。

  控除対象外消費税の処理方法は、課税売上割合や資産の種類、金額によって異なるため、適切な処理方法を選択することが重要です。さらに、損金算入する場合は、法人税申告書に明細書(別表16(10))を添付する必要があります。

 これらの注意点を踏まえ、適切な会計処理と税務申告を行うことが、インボイス制度下での控除対象外消費税の取り扱いにおいて重要です。

まとめ

 インボイス制度における控除対象外消費税の処理は、資産に係るものと資産以外に分けて行います。処理方法は課税売上割合や資産の種類、金額によって異なり、適切な適用が求められます。これらの複雑な処理に不安がある場合は、経理代行サービスの利用を検討することで、適切な会計処理を確実に行うことができます。