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「定款」とは? 記載内容や作成手順を解説

2025.04.19

「定款」とは? 記載内容や作成手順を解説

 会社の「定款」は、企業運営において非常に重要な役割を果たす文書です。会社設立時に必ず作成しなければならないこの文書は会社の基本情報や運営方針を含んでいます。この記事では、定款の内容や作成方法、さらに変更手続きについても詳しく解説しています。定款に関する理解を深めることで、円滑な会社設立と適切な運営が可能になります。

定款とは何か

 定款とは、会社を設立する際に発起人全員の合意のもとで作成される、企業の基本原則を定めた重要な書類です。「会社の憲法」とも称され、設立時に必須の書類の一つとされています。

 この定款には、会社の名称(商号)、事業内容、所在地などの基本情報に加え、企業運営の方針や各種規則を明記する必要があります。

 以前は紙媒体で作成するのが一般的でしたが、近年ではPDF形式で作成し、電子定款として提出する方法も広く普及しています。

定款の作成と認証の手順

 定款の認証とは、法務省の管轄下にある公証役場で、公証人が定款の正当性を証明する手続きです。公証人は法律の専門家であり、通常、裁判官や検察官、弁護士、法務局長など、法律に関連した職務を経験した人物から法務大臣によって任命され、各都道府県に設置された公証役場で業務を行っています。

定款認証の手順

紙の定款で認証を受ける際は、事前に 定款を3通作成 してから公証役場に持参し、認証を受ける必要があります。その前に、公証役場に 予約を取ること を忘れずに行いましょう。

定款の3通の内訳は以下の通りです。

  • 1通目:公証役場保管用
  • 2通目:法務局への登記申請用
  • 3通目:会社保存用

紙の定款で認証を受ける場合、電子定款認証 と比べて 約4万円 ほど多く費用がかかります。定款認証に必要な持ち物は以下の通りです。

  • 紙の定款3通
  • 発起人(出資者)全員の印鑑証明書
  • 収入印紙代 4万円
  • 公証人への手数料 5万円
  • 定款謄本交付手数料 約2,000円(1ページあたり250円×ページ数)
  • 代理人による認証の場合は委任状

定款に記載する内容

絶対的記載事項

 絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない項目であり、これが欠けている場合、定款そのものが無効となります。具体的な内容は以下のとおりです。

  • 発起人の氏名・住所 会社設立時の発起人全員の氏名・住所を記載します。
  • 社名(商号) 商号の決定には一定の規則があるため、慎重に決める必要があります。
  • 事業目的 会社設立時に取り組む事業内容を具体的に記載します。これにより取引の安定性が確保されます。
  • 所在地 会社を登記する際の住所を記載します。通常は事業を行う(予定の)場所の住所が記載されます。
  • 資本金額 会社設立時に出資される財産の価額または最低額を記載します。

 事業目的は特に大切な項目です。以下のポイントに注意して記載しましょう。

同業他社の事例を参考にする

 事業の目的が思い浮かばない場合、同業他社の目的を参考にするのが有効です。多くの会社では定款がホームページに公開されているので、パソコンやスマホで確認してみましょう。もしインターネットで確認できない場合は、法務局で登記事項証明書を取得できます(手数料は600円)。複数の証明書を取ることで、他社の目的や記載のボリューム感を把握でき、事業の目的を明確にする手助けになります。

 許認可が必要か確認する

 事業によっては許認可が必要な場合があるため、定款作成時にその点を考慮した記載が求められます。事業内容によっては、法律名まで定款に明記しなければならないこともあります。また、設立後に健康保険組合に加入する予定がある場合、加入条件を定款作成前に確認しておくべきです。許認可について不明な場合は、行政機関や専門家に相談することが重要です。

将来の事業展開も含めて記載する

 定款に記載されていない事業は後から行えません。そのため、将来的に考えている事業もあらかじめ記載しておくと良いでしょう。一度定款を提出した後に変更するには費用と時間がかかるため、「前号に付随又は関係する一切の業務」といった文言を加えると、幅広い事業に対応できます。設立時に事業計画を見通しておくと、後々の変更手間が減ります。

書きすぎに注意

 定款には文字数制限はありませんが、書きすぎには注意が必要です。過剰な記載は会社の目的が伝わりにくくなり、信用を得にくくなる可能性があります。また、金融機関で口座開設や融資を受ける際に、内容が不明瞭だと取引が難しくなることもあります。設立時には分かりやすく、必要な内容だけを記載することを心がけましょう。

相対的記載事項

 相対的記載事項は、定款に記載しなくても定款自体が無効になることはありませんが、記載がないとその内容が効力を持たない事項のことを指します。要するに、これらの事項について定める場合には必ず記載が必要となります。

相対的記載事項にはさまざまな項目がありますが、主要なものを以下に挙げます。

  • 公告の方法(※官報による公告の場合は記載不要で、任意的記載事項として扱われることもあります)
  • 株式の譲渡制限
  • 取得請求権付株式
  • 取得条項付株式
  • 現物出資に関する事項
  • 財産引受に関する事項
  • 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、委員会、代表取締役の設置
  • 取締役などの任期延長や短縮

任意的記載事項

 任意的記載事項とは、「絶対的記載事項や相対的記載事項に該当せず、法律に反しない内容で記載する項目」を指します。相対的記載事項と異なり、任意的記載事項は定款に記載しなくても、その内容を他の文書に記載すれば効力を発揮します。

 任意的記載事項には例えば以下のような項目が含まれます。

  • 株式について
    株主名簿の基準日
    株主名簿の名義書換手続
    株券の再発行手続
  • 株主総会について
    定時株主総会の招集時期
    株主総会の議長
    議決権の代理行使
  • 株主総会以外の機関について
    取締役、監査役、執行役の員数
    代表取締役、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)取締役会の招集権者)
  • 計算について
    事業年度
  • 公告について
    公告の方法

電子定款とは?

 定款には、記載の有無によって法的効力が大きく変わる事項が含まれており、会社設立の手続きでは必ず作成し、公証を受ける必要があります。従来は書面での定款のみが認められていましたが、現在ではPDF形式の電子定款も利用可能となりました。電子定款の利点として、紙の定款作成時に必要となる印紙代が不要になる点が挙げられます。印紙税は4万円にもなるため、コスト削減につながります。

電子定款に必要なもの

 電子定款の作成には多くの利点がありますが、いくつかのデメリットも存在します。

 その中でも最大のデメリットは、作成に必要な専用のソフトウェアや機器がある点です。

 電子定款作成に必要なものは以下の通りです。

  • マイナンバーカード:プラスチック製のICカード(通知カードは利用不可)
  • ICカードリーダーライター:マイナンバーカードを読み取るために必要(購入時に対応機種か要確認)
  • 電子署名ソフト:PDF化した定款に電子署名を施すためのソフト(代表的なものとしてAdobe Acrobatなど)
  • 電子署名プラグインソフト:PDFに電子署名を付与するためのソフトウェア(Adobe Acrobatを使用する場合は無料で利用可能)

まとめ

 ここまで定款について解説してきました。

 定款の作成に関して不明点がある場合は、司法書士・行政書士へご相談することを強くおすすめします。定款は、会社設立時に必ず作成しなければならない基本的な法的文書であり、会社の目的や組織運営のルールを定める重要な役割を果たします。しかし、その内容には法的な要件が多く、正確に作成するためには一定の専門知識が必要です。特に、会社法や税法に基づく規定を遵守しながら定款を作成することは、初心者にとっては非常に難しい作業となります。

 そのため、司法書士・行政書士による専門家のサポートを受けながら、法的要件を満たした定款を確実に作成することができます。

 ビジネスにおける複雑な法的手続きや税務の負担を軽減し、効率的に会社設立を進めるためには、専門家の力を借りることが非常に有益です。

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