証憑とは、取引の正確性や妥当性を証明するための書類を指し、読み方は「しょうひょう」です。取引の内容やその正当性を証明するために使われるだけでなく、トラブルの防止や税務処理の際の証拠としても重要です。
この記事では証憑の種類、注意点や保存方法など解説します。
証憑の種類

証憑には主に以下の4種類があり、それぞれ異なる用途で使用されます。
売上に関する証憑
売上に関する証憑は、注文から商品の提供、請求に至るまでのプロセスで発生する書類です。具体的には主に以下が含まれます:
- 契約書
- 出荷指示書
- 請求書
- 領収書
これらの書類は売上に直接関連しているため、厳重に保管し、迅速にアクセスできる状態を保つことが重要です。
仕入に関する証憑
仕入に関連する証憑は、商品やサービスの仕入れ時に発行される書類で、主に以下が含まれます。
- 見積書
- 発注書
- 納品書
- 検収書
これらの書類は在庫管理や取引のトラブル防止に役立つため、注意深く管理する必要があります。
雇用・人事に関する証憑
雇用や給与支払いに関する証憑は、主に以下の書類が該当します。
- 履歴書
- 雇用契約書
- 業務委託契約書
- タイムカード
- 作業時間表
- 賃金台帳
特に給与が時間単位で支払われる場合、タイムカードや作業時間表が重要です。これらは従業員との雇用契約や給与支払いの証明となるため、慎重な管理が求められます。
その他の証憑
その他の証憑は、前述の3つに該当しないけれども、取引の真実性や正当性を証明する書類であれば含まれます。主な具体例としては以下の通りです。
- クレジットカードの明細書
- 口座通帳
- 引当金の計上を証明する見積書類
- 勘定に関する修正内容を記載したメモ
これらの証憑は、取引の詳細や正確性を証明するための重要な書類です。
法令による証憑の保存期間と注意点

企業には、証憑を保存する義務がありますが、その期間は会社法と税法で異なる規定があり、両方の基準を満たす必要があることには注意が必要です。
税法および会社法における証憑の保存期間について詳しく解説します。
税法上の保存期間
証憑書類は、取引の証拠であるだけでなく、事業者にとって決算書を作成するための重要な基礎資料でもあります。そのため、所得税法、会社法、法人税法では、「帳簿に関連する重要な書類」として一定の保存期間を守ることが義務づけられています。
なお、法人と個人事業主では証憑の保存期間が異なる点にも注意が必要です。それぞれの保存期間は以下の通りです。
また、2023年10月1日より導入されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)においても、インボイスに関連する証憑の保存期間が定められています。
これについても確認しておきましょう。
税法上の保存期間
法人は、総勘定元帳や仕訳帳などの帳簿と、取引に関連する証憑書類(例えば棚卸表、注文書、契約書、領収書など)を、確定申告の提出期限の翌日から基本的に7年間保存する義務があります。
なお青色申告書を提出した年度に欠損金(青色繰越欠損金)が発生した場合や、青色申告書を提出しなかった年度に災害損失欠損金が発生した場合には、保存期間が10年間(2018年4月1日前に開始した年度については9年間)に延長されます。
会社法に準じた保存期間
会社法によると、会計帳簿や事業に関連する重要な書類は10年間の保存が義務付けられています。一方で、税法で定められている保存期間は7年です。法人においては、基本的には「書類は10年間保存する」という方針で対応するのが適切でしょう。
ただし、契約書類などの重要書類については、法律で定められた保存期間が過ぎた後も破棄せずに保管することを推奨します。また、会社法は営利法人に適用される法律であり、個人事業主には該当しません。
個人事業主(青色申告)の保存義務期間
青色申告を行っている個人事業主は、総勘定元帳や仕訳帳といった帳簿類、損益計算書や棚卸表などの決算書類、さらに領収書や預金通帳、借用証などの現金取引に関する証憑を、確定申告の提出期限の翌日から7年間(※)保存する必要があります。
※ただし、前々年所得が300万円以下の事業主は、保存期間が5年となります。
また、請求書、納品書、契約書、送り状など取引に関連するその他の書類については、保存期間は5年です。
保存期間が5年のものと7年のものを区別するのは複雑になるため、すべてを7年間保存するのが分かりやすいでしょう
個人事業主(白色申告)の保存義務期間
白色申告を行う個人事業主は、決算に関連して作成した棚卸表やその他の書類、および業務に関連して作成・受領した請求書や領収書などの証憑書類を5年間保存する必要があります。
副業者における保存期間
2022年分以降、副業などで前々年の雑所得が300万円を超える場合、その業務に関連する現金や預金の取引に関する書類は、5年間保存する必要があります。
適格請求書は個人・法人を問わず7年間の保管が必要
適格請求書とは、2023年10月1日から導入されるインボイス制度に基づく請求書のことです。この制度において、適格請求書を受け取った課税事業者は、仕入税額控除を受けるために、その請求書を7年間保存する必要があります。
保存義務は個人事業主や法人、副業の有無に関係なく適用されます。
また、以前は請求書の控えを発行する義務はありませんでしたが、適格請求書では控えの作成が必須です。発行側は、この控えも7年間保存しなければなりません。2023年以降は、個人事業主も請求書を7年間保存することで、間違いを防ぐことができるでしょう。
証憑の保存方法

証憑は保存期間中に紛失や廃棄してしまうと、罰則の対象となる可能性があります。この記事では、証憑の適切な保存方法について説明します。
紙でファイルに保存する
紙媒体で証憑を保存する際は、ファイリングを行い、自社の書庫などに保管するのが一般的です。しかし、紙の証憑は時間とともに劣化するため、保存環境には十分な配慮が必要です。
紙媒体の証憑をできるだけ長期間良好な状態で保管したい場合、外部の保存業者に依頼することも有効です。適切な環境で保管してもらえるため、劣化を防ぎつつ、自社の保管スペースを節約できます。ただし、外部業者に委託した場合、証憑を閲覧したり取り出したりするのに、自社での保管と比べて時間がかかることがある点には留意が必要です。
電子データとして保存する
証憑を電子データとして保存する際には、電子取引データをそのまま保存する方法と、紙媒体での取引書類をスキャナでデジタル化して保存する方法の2種類があります。ここでは、それぞれの方法について詳しく説明します。
なお、2022年1月の電子帳簿保存法改正により、電子データで受領した証憑は電子保存が義務化されました。
電子データとして保存
証憑をメール添付やインターネットからのダウンロードで受け取り、そのまま電子データとして保存する方法です。
電子保存を行う際には、改ざん防止のための対策を施すことや、日付、金額、取引先などで検索できる状態にすることが求められます。
スキャナ保存
紙媒体で受け取ったり送付した証憑をスマホやスキャナでデータ化して保存する方法です。この方法では、スキャナ保存までの期限が設けられており、また高解像度での読み取りなど、細かな要件を満たす必要があります。
スキャナで読み取るまでの入力期間には、「早期入力方式」と「業務処理サイクル方式」があり、いずれかを選んで対応することが求められます。
- 早期入力方式: 書類を作成・受領後、概ね7営業日以内にスキャナで保存する。
- 業務処理サイクル方式: 企業の業務処理サイクル(最長2ヶ月以内)を経過した後、概ね7営業日以内にスキャナ保存する。この方式は、事務の処理規程を定めている企業のみが採用可能。
まとめ

証憑の管理も含めて経理業務は企業運営の根幹を支える重要な役割を果たしていますが、多くの企業にとっては負担となることも少なくありません。経理代行サービスに依頼するのがオススメです。
経理代行サービスを利用することで最新の会計基準や税法に基づいた正確な処理が可能です。また内部での経理担当者の雇用に比べ、柔軟な料金体系でコストを抑えられます。経理業務を専門家に任せることで、本業に専念できます。専門家による処理で税務調査や監査のリスクを軽減します。
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