文房具の購入や交通費の立替など日々のちょっとした支払いが企業の現場では頻繁に発生します。こうした小さな経費をスムーズに処理するために活用されているのが「小口現金」です。
本記事では小口現金の基本的な仕組みから具体的な運用方法、管理上の注意点までをわかりやすく解説します。
小口現金の基本

日々の業務の中で発生する少額の支払いに備えて、会社が手元に用意しておく現金を「小口現金」と呼びます。この運用方法は「小口現金制度」とも呼ばれ、多額の現金を常時保管することのリスクを避けるために、部門単位などで少額ずつ管理するケースが一般的です。
小口現金のメリットとして小口現金を用意しておくことにより、社員が業務で立替払いをする必要がなくなります。たとえば、外出時の交通費、急な備品の購入、来客時のお茶代など、即座に現金が必要なシーンに対応できるのが大きなメリットです。
小口現金のデメリットとして、小口現金には厳格な管理が求められます。少額とはいえ、会社の資金である以上、1円単位まで正確に把握する必要があります。そのため、毎日の現金残高確認と帳簿との照合を欠かさず行うことが基本となり、「小口現金出納帳」への記録も日常業務に含まれます。
使用される勘定科目について

小口現金に関する仕訳では、費用の内容に応じて以下のような勘定科目を用います。
- 旅費交通費:電車やバス、タクシーなど交通手段の利用にかかる費用
- 消耗品費:文房具やコピー用紙、封筒といった日常的に使う備品の購入費用
- 水道光熱費:電気・水道・ガスなどの使用料
- 通信費:電話や携帯、インターネット、テレビなどの通信サービスに関する支出
- 修繕費:備品などの修理・メンテナンスにかかった費用
- 雑費:お茶やお菓子、新聞代などその他の細かい支出
なお、小口現金は貸借対照表上では資産として扱われます。そのため、現金が増えた場合は「借方」に、減った場合は「貸方」に記帳する必要があります。
小口現金の運用に使われる2つの方式

小口現金を補充する代表的な方法には、「定額資金前渡制度(インプレストシステム)」と「随時補給制度」の2つがあります。
定額資金前渡制度は、小口現金を管理する代表的な手法のひとつです。
この制度では、各部署に対してあらかじめ一定の金額が経理部から渡され、その範囲内で日々の支払いを行います。支出が発生するたびに内容を記録し、一定期間ごとにまとめて経理部に報告することで、使用分のみが補充され、常に決められた金額が維持される仕組みです。
この方法を活用することで、現金の管理が効率化され、予算オーバーを防ぐ効果も期待できます。
一方、随時補給制度は、必要なタイミングに応じてその都度小口現金を補充する方法です。期間ごとの使用額を見積もるのが難しい場合などに適しており、状況に応じて柔軟に対応できるのが特徴です。
「小口現金出納帳」と「現金出納帳」は何が違う?

それぞれの帳簿に記帳するタイミングをきちんと区別するために、現金とその記録の流れを理解しておきましょう。
(例)
(1)会計担当者が小口現金担当者に現金5万円を渡す
→会計担当者は「現金出納帳」に出金を記入、小口現金担当者は「小口現金出納帳」に入金を記入
(2)小口現金担当者が従業員の経費をその都度精算
→小口現金担当者は「小口現金出納帳」にその都度出金を記録
(3)定められた締日に小口現金担当者が「小口現金出納帳」を会計担当者に提出
→会計担当者は「現金出納帳」に小口現金で使った金額とその内訳を仕訳
(4)使用した金額を集計し、会計担当者が小口現金担当者に補給分の現金を渡す
→会計担当者は「現金出納帳」に出金、小口現金担当者は「小口現金出納帳」に入金を記入
このように、各帳簿に記入する内容やタイミングが異なります。誤って混同しないよう、正しい理解が重要です。
小口現金出納帳と現金出納帳は、記入するタイミングや役割だけでなく、記入者にも違いがあることに注意しましょう。
小口現金は部署ごとに用意され、その管理も各部署で行われますが、現金出納帳は一つだけ用意され、記入を行うのは経理部のみです。
現金出納帳は、会社全体の資金の流れを管理するため、複数の人が記入すると情報が混乱する恐れがあります。したがって、経理部以外の人間が記入することは基本的にありません。
小口現金出納帳をエクセルで作成する方法・書き方

小口現金出納帳の書き方としてエクセルを利用する方法があります。そのメリットとデメリットには、以下のような点が挙げられます。
メリット
- フォーマットを自由にカスタマイズできる
- 修正が簡単に行える
デメリット
- 一から作成する手間がかかる
- エクセルの基本的な知識が必要
エクセルを使うことで、自社のニーズに合わせた使いやすい出納帳を作成でき、また修正も簡単にできる点は大きなメリットです。
しかし、テンプレートを使用しない場合、ゼロから作成する手間がかかり、金額計算の際には関数を使う必要があり、ある程度エクセルの操作に慣れていることが求められる点がデメリットとなります。
小口現金の管理におけるポイント

小口現金の金額設定に決まりはない
小口現金には、法的に定められた上限金額はありません。会社によっては上限額を設定している場合もあれば、設定していない場合もあります。仮に上限額を定めている場合でも、その金額は企業ごとに異なります。
慶弔費など突発的な支出があるため、小口現金の額を過度に大きく設定すると、盗難などのリスクが高まるため、適切な金額に設定することが推奨されます。
毎日残高と記帳内容の照合を行う
小口現金を管理する担当者は、精算がある度に小口現金出納帳に記録し、業務終了時に金額と残高を照合します。
確認時に重要なのは、「支出金額と手元に残っている現金の合計」と「入金額の合計」が一致していることです。一致しない場合、記帳ミスや計算ミスが発生していることが考えられます。
支出内容の記録を徹底する
日々発生する小口現金の支出内容は、必ず小口現金出納帳などに記載し、何に使ったか、支出金額などを詳細に記録します。
もし小口現金係と経理担当者が異なる場合、月末には経理担当者に報告する必要があります。支出内容の記録が不十分だと、後々経理処理で混乱を招く可能性があるため、漏れなく正確に記録することが大切です。
思い切って小口現金を廃止するという選択肢もある

経費の支払いをすべて従業員の立替とし、後日給与などとあわせて精算する方法を取れば、小口現金を用意する必要がなくなります。
ただし、事業規模が拡大してくると、立替の回数や金額が増えることが予想され、従業員にとっては負担が大きくなる可能性があります。また、精算前に領収書を失くしてしまうと、処理に支障をきたすリスクも考えられます。
状況や規模に応じて、最適な運用方法を見極めることが大切です。
まとめ

ここまで小口現金について解説してきました。小口現金の管理方法や記帳方法にご不明点がある場合などは会計アウトソーシングの利用をお勧めします。
会計アウトソーシングの利用は、小口現金の管理や記帳業務の効率化において非常に効果的な方法です。
特に経理担当者が限られている小規模な事業や一人会社などにとって、日常的な現金管理や取引の記帳業務は時間と手間がかかり、ミスが発生するリスクも高くなります。このような業務を専門のアウトソーシング業者に依頼することで、正確かつ効率的に業務を進めることができ、ミスや漏れのリスクを減らすことができます。
小口現金の管理は、取引の記録や精算業務、残高確認など、手作業で行うと非常に煩雑でミスが発生しやすい部分です。特に、現金の取り扱いは慎重を要し、誤った記録や不足・過剰が発生すると、会社の信頼性や財務状況に大きな影響を与えることがあります。
会計アウトソーシングを活用することで、これらのリスクを専門家が管理することになり、精度の高い記帳が保証されます。
さらに、アウトソーシング業者は最新の会計基準に精通しており、法令遵守の観点からも非常に安心です。
小口現金の取り扱いは常に最新の情報をもとに業務を進める必要がありますが、会計アウトソーシングはこうした改正にも対応しているため、法的なリスクを最小限に抑えることができます。
経理業務の負担をアウトソーシングに委託することで、自社のリソースを本業や成長戦略に集中することができるため、業務の効率化やコスト削減にもつながります。特に経営者や事業主が日常業務に追われることなく、重要な意思決定に専念できる点は大きなメリットです。
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