オフィスで使用するパソコンやデスク、ソフトウェアなどを購入した際、経理担当者を悩ませるのが「減価償却」の処理ではないでしょうか。通常、高額な資産は数年にわたり費用化しますが、一定の金額以下の資産であれば、特例を使って一度に経費計上できる場合があります。
これを正しく理解して活用することで、その年の利益を圧縮し、節税につなげることが可能です。しかし、金額の基準が10万円、20万円、30万円と複数あり、どの処理を選択すべきか迷ってしまうケースも少なくありません。
本記事では、いわゆる「少額減価償却資産」の判定基準や計算方法、実務上の注意点をわかりやすく解説します。複雑な資産管理を効率化し、正確な決算を行うための一助となれば幸いです。
少額減価償却資産の基本的な考え方

減価償却とは、長期間使用する資産の購入費用を、その使用可能期間(耐用年数)にわたって分割して費用計上する会計処理のことです。原則として、使用可能期間が1年以上で、かつ取得価額が10万円以上の資産は固定資産として資産計上し、減価償却を行う必要があります。
しかし、少額な資産まですべて厳密に減価償却を行うと、計算や管理の手間が膨大になってしまいます。そこで、中小企業の実務負担を軽減し、設備投資を促進するために設けられているのが「少額減価償却資産」に関する特例措置です。
通常の減価償却との違いと即時償却のメリット
少額減価償却資産の特例を活用する最大のメリットは、「即時償却」が可能になる点です。通常であれば5年や10年かけて少しずつ経費にするものを、購入した年度に全額「損金(経費)」として処理できます。
これにより、利益が多く出た年度に設備投資を行うことで、課税所得を減らし、法人税等の負担を軽減する効果が期待できます。また、固定資産台帳に長期間残ることがないため(処理方法によります)、将来的な管理コストを削減できる側面もあります。
取得価額に含まれる付随費用の範囲
「10万円未満か、30万円未満か」という判定を行う際の基準となる金額を「取得価額」といいます。ここで注意が必要なのは、取得価額には「本体価格」だけでなく、「購入にかかった付随費用」も含める必要があるという点です。
具体的には、以下のような費用が含まれます。
- 引取運賃(送料)
- 荷役費
- 運送保険料
- 購入手数料
- 関税
- 据付費(設置工事費など)
例えば、29万円の機械を購入し、設置費用に2万円かかった場合、合計31万円となり「30万円未満」の特例基準を超えてしまう可能性があります。判定を行う際は、請求書の合計金額をしっかりと確認することが重要です。
判定における消費税(税込・税抜)の注意点
取得価額が10万円や30万円未満かどうかを判定する際、「消費税を含めるか含めないか」によって結果が変わることがあります。この判定は、会社が採用している「経理方式(税抜経理方式または税込経理方式)」によって決まります。
- 税抜経理方式の場合:消費税抜きの本体価格で判定します。
- 税込経理方式の場合:消費税込みの金額で判定します。
例えば、税抜98,000円(税込107,800円)のパソコンを購入した場合を考えてみます。税抜経理なら「10万円未満」として消耗品費処理が可能ですが、税込経理を採用している場合は「10万円以上」となり、資産計上が必要になります。自社の経理方式を必ず確認するようにしてください。
金額別に見る処理方法のフローチャート

少額な資産を購入した際の処理は、取得価額によって大きく3つのパターンに分かれます。それぞれの基準と処理方法の違いを整理しましたので、実務における判断の参考にしてください。
10万円未満:全額を経費計上できる消耗品費
取得価額が10万円未満の資産は、税法上の「少額減価償却資産」として扱われ、購入時に全額を経費にすることができます。
- 勘定科目:消耗品費、事務用品費など
- 償却資産税:対象外(申告不要)
- 適用要件:制限なし(全法人・個人事業主)
このケースでは資産計上する必要がないため、最も処理がシンプルです。ただし、中小企業の場合でも「あえて資産計上する」ことは可能ですが、実務上のメリットは少ないと考えられます。
20万円未満:3年で均等償却する一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、「一括償却資産」という処理を選択できます。これは、個別の耐用年数に関わらず、すべての資産をまとめて「3年間で均等に償却する」ことができる制度です。
- 勘定科目:一括償却資産
- 償却方法:3年均等償却(月割り計算なし、期中のいつ買っても1年分は1/3)
- 償却資産税:対象外(申告不要)
- 適用要件:全法人・個人事業主
一括償却資産の大きなメリットは、固定資産税(償却資産税)の課税対象にならない点です。後述する30万円未満の特例を使うと即時償却はできますが、償却資産税はかかってしまいます。そのため、償却資産税の節税を重視する場合は、この一括償却資産を選択するのが有効な手段となります。なお、この適用を受けるためには、法人税の確定申告書に専用の明細書(別表)を添付する必要がありますので、申告時に漏れがないよう注意が必要です。
30万円未満:年間300万円まで即時償却できる特例
取得価額が30万円未満の資産については、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を利用することで、購入年度に全額を経費計上できます。
- 勘定科目:工具器具備品など(損金経理が必要)
- 償却方法:即時償却(全額経費)
- 償却資産税:対象(申告が必要)
- 適用要件:青色申告を行う中小企業者等、従業員数1,000人以下など
- 限度額:1事業年度につき合計300万円まで
この特例は節税効果が高い反面、償却資産税の申告対象となる点に注意が必要です。また、年間300万円という上限があるため、期末に大量に購入する場合などは枠を超えてしまわないよう管理する必要があります。
「セット購入」時の判定単位に注意

金額判定を行う際、もう一つ迷いやすいのが「判定の単位」です。原則として、減価償却資産の判定は「通常1単位として取引される単位」ごとに行います。つまり、単体では機能せず、セットで初めて使えるものは、合計額で判定する必要があります。
パソコンとモニターなどセットで使うものの判定
例えば、デスクトップパソコンを購入する場合、PC本体、モニター、キーボードはそれぞれ別々に値段がついていても、これらがセットでなければパソコンとして機能しません。したがって、これらは「1セット」として合計額で判定を行います。
一方で、LANケーブルや後から追加で購入した周辺機器などは、それ単体で機能を追加するものであれば、個別に判定できるケースもあります。判断に迷う場合は、顧問税理士等に確認することをお勧めします。
応接セットやカーテンなどの具体例
- 応接セット:テーブルと椅子がセットで販売・使用される場合、通常は1組(テーブル+椅子全脚)の合計額で判定します。
- カーテン:一つの部屋の窓にかけるカーテンは、数枚あっても部屋全体で機能するため、部屋ごとにまとめて判定するのが一般的です。
- パーテーション:簡易的なもので移動可能なものは器具備品ですが、建物に固定して部屋を区切るような工事を伴う場合は、建物付属設備となり、工事代金全体での判断が必要になることがあります。
修繕費か資本的支出かの判断基準
既存の資産に対して修理や改良を行った場合も、その費用が少額減価償却資産と同様の扱いになるかどうかが問題になります。
- 修繕費:原状回復や維持管理のための費用(全額経費)
- 資本的支出:資産の寿命を延ばしたり、機能をグレードアップさせたりする費用(資産計上して減価償却)
この区分けにおいても「20万円未満」や「周期が短い(およそ3年以内)」などの形式基準がありますが、基本的には「資産の価値が上がったかどうか」がポイントです。60万円未満の場合や、前期末取得価額の10%以下の場合なども修繕費として認められる基準があるため、高額な修理を行う際は注意深く検討する必要があります。
少額減価償却資産に関するQ&A

Q1.青色申告以外の法人でも30万円の特例は使えますか?
A.いいえ、使えません。「30万円未満の少額減価償却資産の特例」は、青色申告を行っている中小企業者等(資本金1億円以下、従業員数1,000人以下など)に限定された措置です。白色申告の事業者や、大規模法人は対象外となります。その場合は、10万円未満なら消耗品費、20万円未満なら一括償却資産、それ以上は通常の減価償却を行うことになります。
Q2.中古資産でも少額減価償却の対象になりますか?
A.はい、対象になります。新品だけでなく、中古で購入した資産であっても、取得価額が要件を満たしていれば特例の適用が可能です。中古品は取得価額が低くなることが多いため、この特例を活用しやすいと言えます。
Q3.年度の途中で購入しても全額経費にできますか?
A.はい、全額経費にできます。「10万円未満の消耗品費」および「30万円未満の特例(即時償却)」については、期首に買っても期末ギリギリに買っても、その全額を当期の経費に計上できます。月割り計算は不要です。ただし、「一括償却資産(20万円未満)」の場合は、3年間の均等償却となるため、購入時期に関わらずその年の経費になるのは取得価額の3分の1までとなります。
まとめ:金額基準を正しく理解して適切な経理処理を行おう

減価償却資産の処理は、取得価額が10万円、20万円、30万円という境界線によって、選べる償却方法や税務上の取り扱いが大きく異なります。
- 10万円未満:消耗品費(全額経費)
- 10〜20万円未満:償却資産税を避けたいなら一括償却資産
- 30万円未満:法人税を減らしたいなら特例で即時償却(要青色申告)
これらの基準を正しく理解し、自社の利益状況に合わせて最適な方法を選択することで、効果的な節税対策が可能になります。なお、個別の税務判断や、先述した申告書への別表添付などの具体的な税務手続きについては、顧問税理士等の専門家にご相談の上、進めていただくことを強く推奨いたします。
しかし、資産の数が増えれば増えるほど、「どれがどの処理だったか」「限度額は超えていないか」「現物はどこにあるか」といった管理業務は複雑化し、経理担当者の大きな負担となります。正確な資産管理ができていなければ、適切な申告もできません。
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