法人が事業を継続するために生命保険や損害保険などの保険料を支払った場合、それを経費として計上できます。ただし保険の種類や内容、保険金の受取人に応じて、使用する勘定科目が異なり、適切な仕訳処理が求められます。
そこでこの記事では、保険料を経費として計上する際に使う勘定科目について詳しく解説します。
保険料の勘定科目について
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保険料や保険金が企業の収支にどのように影響するかを正確に把握するためには、適切な勘定科目での処理が必要です。企業が保険料を支払う際と保険金を受け取る際の勘定科目を解説します。
保険料を支払う時の勘定科目
保険料を支払う際の勘定科目には「保険料」「保険積立金」「支払保険料」などがあります。企業は保険契約を結び、保険会社に対して支払う保険料を記録します。通常、保険料は年単位で支払われることが多いですが、複数年分を一度に支払うこともあります。
保険金を受け取る時の勘定科目
保険金を受け取る際の勘定科目は「雑収入」です。企業が保険金を受け取る場合に、この科目で記録します。保険金の額は損害の程度や契約条件によって決まります。
保険料の具体的な例
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保険料には大まかに生命保険料と損害保険料と社会保険料があり、それぞれさらに細かく分類されます。保険料の額は契約者の年齢やリスクの頻度、保険金額など多くの要因によって決まるため、単に安いから良いというわけではありません。以下でそれぞれについて解説します。
生命保険について
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生命保険の基本的な経理処理の考え方としては以下のポイントが重要です。
- 契約形態
- 保険の種類
- 保険料の支払い方法
これらの要素によって、保険料を費用として処理するか資産として計上するかが決まります。ただし、長期平準型定期保険や逓増定期保険など、特定の法人保険には特別な処理を必要とするケースがある点に注意が必要です。
特に重要なのが「受取人」です。会社が利益を得るのか、それとも従業員が恩恵を受けるのか、受取人が誰かを正しく把握することで、経理処理がよりスムーズに進められるでしょう。
以下では、基本的な事項として貯蓄性のある保険と貯蓄性のない保険の経理処理についてご説明します。
貯蓄性のある保険商品
貯蓄性のある法人保険には、以下のようなものがあります。
- 養老保険
- 個人年金保険
- 解約返戻金がある終身保険
「受取人」を軸に考え、受取人が誰かを確認することで、経理処理が簡単になります。誰が利益を受けるのかを明確に把握できます。
受取人 | 経理処理 |
---|---|
法人 | 資産計上 |
役員・従業員など個人 | 費用処理 |
受取人が法人の場合、保険金は会社に支払われるため、保険料は積み立てとみなされ、資産として計上されます。一方、受取人が個人の場合は会社の資産とはならず、費用として処理できます。
ただし、受取人が個人の場合にはみなし給与とされ、課税対象となる点には注意が必要です。
貯蓄性のない保険商品
貯蓄性のない保険は、解約返戻金がない保険商品です。例として以下の保険があります。
- 掛け捨て型定期保険
- 掛け捨て型医療保険
この場合、保険料の支払時には以下のように経理処理が行われます。
受取人 | 経理処理 |
---|---|
法人 | 費用処理 |
役員・従業員など個人 | 費用処理 |
受取人にかかわらず費用として計上されることに変わりはありません。ただし個人の場合、全従業員が対象か特定の個人かで取り扱いが異なります。
- 全従業員:福利厚生費として損金算入
- 特定の個人:みなし給与として損金算入
特定の個人が対象の場合はみなし給与となるため、所得税が課税される点に留意しましょう。
定期保険特約付終身保険についての注意点
定期保険特約付終身保険のように、複数の保険が組み合わされた保険の場合、主契約と特約を分けて処理する必要があります。
例えば、受取人が法人で、終身保険の主契約に解約返戻金がある場合は、その保険料は資産として計上されます。一方、特約の定期保険が掛け捨て型であれば、費用として処理する必要があります。
このように、1つの保険でも異なる処理が必要な場合があります。
損害保険について
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損害保険は様々なリスクや損害に対して保障を提供する保険であり、例えば以下の種類があります。
- 自動車保険: 車両の損害や責任に対する保障を提供し、対物・対人賠償責任保険、自賠責保険などがあります。
- 火災保険: 住宅やその中の財産に対する損害をカバーする保険で、一般的に建物保険と家財保険が含まれます。
- 賠償責任保険: 第三者に対する賠償責任に対して保障を提供し、広範囲にカバーすることで、保有資産や将来の収入を守る役割を果たします。
企業が損害保険料を支払った際、その保険が事業に関連しているものであれば、経費として計上することができます。
損害保険料が経費として認められる条件は以下の通りです。
- 事業に関連する火災保険や自動車保険の支払い(保険契約を結び、保険料を振り込んだ時点で経費に計上することが可能。保険会社に保険料が入金されると同時に、ほとんどの保険では保障が開始される)
- 当年度に発生した販売費、一般管理費、その他の業務上の費用
損害保険料が経費として認められないケースは以下の通りです。
- 事業に関連しない損害保険料の支出:例えば私的な火災保険や自動車保険の支払い。
例えば、企業や個人事業主がオフィスを借りる際に火災保険への加入が必要な場合、支払った火災保険料は経費として認められます。しかし、個人事業主が自宅の火災保険を支払った場合、その支出は事業と無関係であるため経費として計上することはできません。
社会保険について
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社会保険料の会計処理では、会社負担分と従業員負担分について、それぞれに適切な勘定科目を使用する必要があります。
会社負担分は「法定福利費」として処理します。一方、従業員負担分には2つの方法があり、「法定福利費」として計上する方法と「預り金」として処理する方法があります。
- 会社負担分: 法定福利費
- 従業員負担分: 法定福利費 または 預り金
そもそも社会保険とは
狭義の社会保険と広義の社会保険に分けて考えられます。狭義の社会保険には、健康保険、厚生年金保険、介護保険の3つが含まれ、広義の社会保険にはこれに加えて雇用保険と労災保険が含まれます。
- 狭義の社会保険: 健康保険、厚生年金保険、介護保険
- 広義の社会保険: 健康保険、厚生年金保険、介護保険に加え、雇用保険と労災保険
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、労使折半で負担します。雇用保険料は、厚生労働省が毎年発表する「雇用保険料率表」に基づいて、事業ごとに保険料率と労使の負担割合が決まります。労災保険料は全額事業主が負担します。
社会保険料は毎年4月から6月の3ヶ月間の平均給与に基づいて「標準報酬月額」が算出され、その結果を基に保険料が決まります。これを「定時決定」と呼び、毎年7月に「被保険者報酬月額算定基礎届」を年金事務所に提出して、9月から新たな保険料が適用されます。
もし、給与が2等級以上大幅に変動した場合は、定時決定を待たずに「随時改定」として改定されます。
介護保険料の算出方法は、年齢や加入している保険制度によって異なります。40〜64歳の「第2号被保険者」は、標準報酬月額を基に算出され、自営業者など「国民健康保険」に加入している人は、所得割額、均等割額、平等割額、資産割額が基準になります。
65歳以上の「第1号被保険者」は、居住する自治体で定められた基準額と本人および世帯の所得状況に基づいて算出されます。
まとめ
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法人が保険料を支払う際には、保険の種類や保険金の受取人によって、使用する勘定科目が異なるため、仕訳ミスを避けるよう注意が必要です。
さらに、1年以上にわたる保険料の支払いがある場合は、決算時と翌期、またはその後の期間における仕訳処理も行わなければなりません。
ここまで解説してきた通り保険料の会計処理には専門知識が必要です。また、証憑の管理なども簡単ではありません。そこで、会計アウトソーシングの利用がおススメです。
煩雑な会計処理を専門家に委託することで、時間とリソースを節約し、本来の業務に集中できます。最新の税制や法改正に対応した正確な処理を行うことで、ミスやリスクを最小限に抑え、コンプライアンスも万全。
さらに、コスト削減と柔軟な対応力を発揮でき、会社の成長をサポートします。今こそ、会計アウトソーシングを導入し、業務効率の向上と経営の安定を実現しましょう。
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